私の恋のキューピットは、みなさんお馴染みのアレでした!

野菜ばたけ@『祝・聖なれ』二巻制作決定✨

第1話 ウケ狙いじゃありません



 結婚式の披露宴。

 新郎新婦の出会いから今までを振り返るスライドショーで最初にドンッと映ったのは、不変の赤いパッケージだけだった。


「私たちの恋のキューピットは皆さんおなじみ、あの『赤いきつね』だったんです」


 事前に撮影した音声の中の私が皆にそう説明した途端、何故だが周りがドッと沸いた。

 ……という話を、お色直しで赤いドレスに着替えている最中に、様子を見に来た係の人から伝え聞いた。


 良い笑顔で「掴みはもうばっちりでしたよ!」なんてグーサインをしてくるんだから、私も思わず笑ってしまう。



 別に受けを狙った訳では無いから一体その話のどこに笑ったのか分からないが、まぁ来てくれている人たちが楽しんでくれているんだから良しとしよう。

 そんな風に思っていると、係の人がおもむろに「で、どうなんですか?」と聞いてきた。


「え?」

「あのきつねのお話って、ぶっちゃけ本当なんですか?」

「本当ですよ? 何なんですかその疑問」

「いやもしかして、ウケ狙いの冗談かなって」

「違いますよ、何で結婚式で二人の出会い紹介するのにウケ狙わなきゃならないんですか」


 随分と気さくな人だけど、本当に疑っている風ではないからか。

 幸いと嫌な感じではない。

 だから私もクスクスと笑いながらそう答え、その一方であの時の事を思い出す。

 

 私と夫になった彼とを、繋いでくれたあの日の事を。



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