召喚勇者の異世界攻略記

ナナシリア

魔王討伐

第1話 異世界召喚

 目の前に広がる景色。その奥には、玉座と思しきものがあった。そこに座っているのは、王冠をつけた人。恐らく王様だろう。その隣には魔法使い若しくは魔術師と思しきローブ姿の人々、それに武装した騎士たちもいた。


 時を遡って十分前、俺は、家でゲームをしていると突然現れた魔法陣のような物から出る光に包まれ、ここへ飛ばされた。


 所謂『召喚』をされただろう俺は、玉山に座っている人――勿論の事、王様である――から話しかけられた。

 玉座で偉そうにしながら、王様は言った。


「勇者様、どうかこの世界をお守りください!」

「……………………?」


 一瞬の硬直。驚いたのはこの世界を守るという内容ではなく、王様が勇者如きに敬語を使ったことだ。世界を守ること自体はテンプレなので問題ない。王様が敬語を使ったのだから、この国の追い詰められようが見て取れる。


「取り敢えず、今日一日、頭を整理してください。突然こんなことを言われて戸惑っていると思いますので」

「あ、はい。そうします」


 正確に言うと王様に世界を救え的な事を言われて戸惑っているのではなく、何十億人もいる地球の人間から俺が選ばれたことと、王様が敬語で喋りだしたことに戸惑っているのだが。


 だが王様の厚意を無下にするのも悪く、勧められた部屋に行ってみる。


 その部屋は小綺麗で広かった。これは優遇パターンを期待して良いだろう、この扱いなのだから。……ここから一気に追放とかやめてくれよ。


 翌日になった。王様に渡したいものがあると言われ、外へ案内された。王宮の外に出て十分ほど歩くと、突然王様が止まった。そこには石があった。唯の石ではなく、剣が刺さった石だ。テンプレに従うとすれば、刺さっている片手剣が聖剣だろうか。


「聖剣エクスカリバーです。真の勇者ならば抜ける筈です」

「……」


 これって抜けなかったら追放される奴だろう? 俺は知っている。数多のラノベを読みつくし、キモオタと呼ばれた甲斐がある。


 追放されて俺が死んだら家族が悲しむ! ……父も母も死んだし、俺は一人っ子なので俺に家族なんていなかったが。


 抜かなくても追放されると思うので、少し力を込めて引っ張ってみる。ちょっと動いたのだが……。まだ抜くには至らない。思い切り力を入れる。聖剣エクスカリバーがスポンッ! と、小気味いい音を立てて抜けた。


「おお、聖剣が抜けるとは! これは大した勇者ですな!」

「い、痛い……」


 聖剣は抜けたが、後ろに吹っ飛ばされた俺は腰が抜けてしまった。動けないのは辛い……。

 騎士が手を差し出してくれたお陰で立つ事が出来た。歩いて王宮へ戻る。


 王宮の謁見の間に到着すると、王様が俺に向けて喋り始めた。説明をくれるのだろうか。よくある中世風ファンタジー世界なのかこれ? じゃあ魔法だとか魔術だとかがあるのだろうか。


「この世界について、勇者様に説明したいと思います」

「はい」

「この世界には『レベル』という要素があります。

 このレベルが高ければ強いという訳ではなく、才能によって決まりますが、才能が同じくらいの人はレベルで差が決まると言えるでしょう。

 このレベルというのは、経験によって上がります。なので、生物を殺さなくてもレベル上げをすることは可能ですが、格下との戦闘ではほぼ上がりません。

 さらにステータスというものもあり、これは自分の凡その戦闘力を表しています。手っ取り早く見てしまいましょう」


 そういって、俺に板のようなものを渡してきた。恐らくステータスプレートだろう。これで確認しろっていうのか。使い方は……?


「使い方がわからないのですが」

「ボタンがありますよね?そこを押せばいいだけです」


 ポチッ。音が謁見の間に響いた。板が純白に光りだし、黒い文字を映し出した。

 あ、日本語だ。なんで異世界って日本語なんだろう。気にかけていなかったが、会話の時も日本語だったなそういえば。


名前:金堂勇

性別:男性

年齢:16歳

職業:勇者

種族:人間

Lv.1

筋力:100

耐久:100

速度:100

器用:100

聡明:100

魔力:100

スキル:なし


 やたらと項目が多い! イライラするなぁ……。でも、人間の能力は少ない項目では表しきれない、と言う事なのだろう。


 それより。このステータスってどうなのだろうか……。100と言うと、平均になりそうじゃないか? スキルは一つもないし、雑魚扱い? やっぱり追放か?


「私のステータスはこんなものですよ」

「どれどれ……」


名前:ルシフェル=ステイシア=アラナンド

性別:男性

年齢:58歳

職業:統率者

種族:人間

Lv.87

筋力:2

耐久:14

速度:7

器用:3

聡明:18

魔力:12

スキル:賢者見習いLv.87


 この王様、戦わないからか知らんが……弱くないか?いくら何でも勇者がLv.1で圧倒できるLv.87の人なんていないだろう。


 王様に魔王を倒したら元の世界に戻れるかと聞いてみたら、勿論戻れませんよと返された。現時点では異世界から人間を召喚する方法がわかっていても、戻す方法は分からないらしい。魔王に聞いてみろと言われた。理不尽だ。


 幼馴染の陽菜はうまくやっているだろうか。小学生時代からのクラスメート、諒哉は嫌われていないだろうか。両親はいないが、代わりに育ててくれた陽菜の母さんは俺が突然消えて戸惑っていないだろうか。


 その後、自分の実力を知る為と言われ、なぜか強制的に連れてこられた訓練場。元の世界に戻れないと言う事に対する憤怒のままに素手で力任せに騎士達をぶちのめすと、騎士たちの煽りを受けて急に騎士団長と戦うことになってしまった。いくら何でもLv.1の人間にそりゃあないよ。


 騎士団長と言ったらこの国のトップクラス戦力だろう? Sランク冒険者並みの戦力を持っているんだろう? おっと、どこかのラノベの設定だったな、これは。


 この世界にランク制度があるかは分からないし、そもそも冒険者自体が存在しないかもしれないし。じゃあどうやって魔王と戦うのか? と思うのだが。


「どうも、儂はアラナンド神国騎士団団長、ギルダー・アルダです」

「あ、どうも。勇者と言われています、金堂勇です」


 鑑定スキルとか欲しいな~。相手の攻撃を読んで、「な、なんだと⁉ 我が秘奥義が防がれるのだ⁉」とか言われてみたいな~。


「スキル・千里眼!」

「なんじゃそりゃ」


《スキル・千里眼を手に入れました!スキル・千里眼 詳しい情報を見ることが可能となる》


 え、なんで今覚えたの? もしかしてギルダーさんが使ったから? スキルコピー能力を持っていたのか俺は! チートじゃないか!


「これで勇者殿のステータスはまるわかりだ!」

「スキル・千里眼!」


 俺は先ほどギルダーさんがやっていたようにして、スキル・千里眼を発動してみる。如何にも厨二病スキルらしいが、見通すというのはかなり便利だ。


名前:ギルダー・アルダ

性別:男性

年齢:76歳

職業:上位騎士パラディン

種族:仙人(元:人間)

Lv.77

筋力:70000

耐久:30000

速度:26000

器用:60000

聡明:25000

魔力:4

スキル:剣術Lv.100、身体強化Lv.100、攻撃予測Lv.100、剣筋補正Lv.100、自動回避Lv.91、千里眼Lv.61、仙人闘気Lv.61、瞑想Lv.61、怪力Lv.61、気配隠蔽Lv.55


剣術:剣の術。スキルレベルに比例して扱いが上達する。


身体強化:スキルレベルに比例して身体能力が上昇する。


攻撃予測:攻撃を予測する。スキルレベルに比例して気配の隠蔽された攻撃も予測できる。


剣筋補正:スキルレベルに比例して剣筋の補正と補正後の命中精度が上昇する。


自動回避:自動的に回避する。スキルレベルに比例して行動が早くなる。


瞑想:集中すると、傷を治せる。スキルレベルに比例して治せる傷の大きさは変わる。


仙人闘気:仙人特有の闘気を纏う。スキルレベルに比例して闘気の濃さが上がる。


気配隠蔽:気配を隠蔽する。スキルレベルに比例して隠蔽できる気配の大きさと隠蔽率が上がる。所持品、攻撃にも適用可能。


怪力:スキルレベルに比例した怪力を出せる。


 あぁ、この人には勝てない系だな。何よりやばそうなスキルがすごい量あるし。俺とか他の人と比べてバカ強いし。なんで勇者よりもステータスが高いのだ。


《スキル・解析を手に入れました! スキル・解析 スキルや行動などを解析可能になる》


 なんか貰ったが、勝てないな。俺は訓練用の木剣を構え、いつでも戦える準備をした。ああいうキャラは弱点があるのがRPGゲーの基本だからな!

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