弐 儚き意地の旋律
半妖は眺める
人の意地と
ある田舎での事
一人の吟遊詩人がいた
天性の歌声と奏で広がる
時として激しく
時として優しく
聴いた者からは
それでも己を
歌に自信がある一方
技術が足りぬと嘆く
「私より上の者はいる」
かく言う半妖の私も
珍しく魅了されていた
私は変化を試みた
前向きで優しい少女へ
花冠を作り吟遊詩人へ手渡した
「貴方の歌は素敵だ」との言葉と共に
吟遊詩人は微笑んだ
「とても嬉しい」と
私の行動を見た周りの人
触発されるように揃って
吟遊詩人の歌声を褒め称えた
そうして吟遊詩人は
また
「私には歌声しかないのか」
そうじゃない
そうじゃない
私は再び少女へ変化した
美しい首飾りを手渡し
「貴方の奏でる
言葉と共に
吟遊詩人はまた微笑んだ
「君は優しいね ありがとう」と
私のとった行動で
また周辺の人が褒め称える
そうして吟遊詩人は更に
「この人達の期待に
応えられないかもしれない」
私はまた少女へ変化した
潤い
「貴方自体が素敵だ」
「
「己を信じて進んで」との
言葉と共に
吟遊詩人は
「いつも前向きなお前に何がわかる」
「
「自分を保つ為に褒められる為に」
「私は歌っているんだ!」
ああ、吟遊詩人は
背中を押す言葉が欲しいわけでは無い
己を肯定し賞賛する声が欲しいのか
前向きな少女の姿は不要
私は変化を解いた
前世に潰され殺された姿を
吟遊詩人へ
「お前には歌声があるくせに」
「さあ、私は潰されて醜かろう?」
「変化しかできぬ私は」
「眺める事しか出来ぬのだ」
吟遊詩人は私を
そして
それでも、前向きで優しい少女の
暖かな言葉は胸に刻まれている
だから彼は言うのだろう
「また聞きに来てくれ」
「少女の姿で」
素直で愚かで綺麗なものだ
そして、肩入れした私も愚かだ
次へ行こう
次の世を眺めよう
この世界には
既に用はない
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