第50話 アーサーside

 王妃とアイラのお茶会を邪魔してまでアイラに会いに行ったのだ。そのまま帰す訳にはいかない。もっと一緒に居たい。


 僕の部屋に案内すると若干引いていた気がする。グレイの言っていた事は本当なのか…?アイラと結婚したら規模を縮小してもいいかもしれない。


 アイラは理由を付けて帰る様子だったが、逃がさない。アイラと街に出かけるのはやっぱりいいね。防具の店へ入るとアイラがじっと見ている装備。


 こ、これは…。女剣士の装備だが、露出が激しい。着た姿を見てみたいが、こんな装備を着た姿をみんなに見せたくないな。アイラが選んだシャツとズボンとブーツ。アイラの騎士姿も萌える。今度着てもらいたい。


 試着から出てきたアイラは凛々しく女神が降臨したかと思った。胸元が開いていて谷間がチラッと見えている。結構胸はある方だとは思っていたが。首元の僕のデザインしたネックレスもいい。すぐにでも部屋に連れ帰りたい衝動に駆られる。


あまりがっついてはアイラを怯えさせてしまうから気をつけないとな。アイラを見送ってからすぐに魔法塔へ行き、今週末に散策に行けるように手配させた。


テオもノアも乗り気だから明日にでも行く予定だったらしい。反対に僕の学院行事のために週末まで延期となったのは内緒だ。


 アイラの居なくなった学院はつまらない。あれからも令嬢達は僕に付き纏おうとしていたが、アイラが見ていないのだから容赦はしない。


側近としていつも側にいるリチャードの顔は青ざめていたが、関係無いね。普段は魔法騎士団の設立準備に忙しいのだが、副官のリチャードは人選やルール作り、服装から武器の1つに至るまで決めなくてはならず、今回の調査は涙を飲んで不参加となった。




 待ちに待った魔樹調査の日。やはりアイラは可愛い。アイラの話では魔樹はどうやら前回よりも増えていたらしい。


 アイラが身体強化と結界をしてくれた。感動だ。全身からアイラを感じる。目玉を怖がる事なく抉る姿はまさしく女神。また惚れてしまうよね。


僕達は調査を続けている間は魔物が来ないか確認作業をしていたんだけど、アイラは突然親玉魔樹に魔力を通し始めた。


あ、目玉が沢山上から落ちてくる。これは少し苦手だな。身体中に付いた目玉にテオもノアも渋い顔をしてる。


どうやら結界は効かないらしい。目玉は魔力を吸っているようだが、どちらかと言えば魔力を出す事を阻害している面が大きいように思う。


僕の魔力量では効果はあまり無いようだ。アイラが満遍の笑みで振り向いた。なんて女神なんだ。テオは持っていたナイフで目玉を取ろうとするが、どうやら相当の痛みがあるらしい。みんなが集まり、アイラに浄化をかけてもらうと奇声と共に痛み無く目玉は落ちていった。


「拾うのよ!!」


 女神様降臨だ。急いで落ちた目玉達を拾っていると魔物が現れた。


テオは熊の魔獣、ノアは大蛇の魔獣、僕とグレイは狼と対峙。


 この時の為に魔法剣を持ってきたんだ。訓練で使用はしていたが、実戦はした事が無かったのでいい練習相手だ。


グレイは先程目玉に魔力を吸われたから魔法を使用せずに普通剣として切っているが。


 剣は魔法を使わなくても難なく使用出来るし、普通剣に比べても威力が格段に違うな。アイラが研いでくれた剣は実はどの剣よりも切れ味が鋭く、宝剣にも勝るとも劣らない。


是非、僕の剣全てアイラにお願いしたい。奥さんが剣を作り、僕が使って敵を倒す。痺れるよね。素敵な共同作業だ。


 アイラを見ると狼が瞬時に倒れた。3頭とも。流石奥さん。でも僕が守ってあげたかったな。狼3頭を持って行こうとする姿はなんて勇ましく可愛いんだ。


倒した狼をグレイに持っていかせる事にした。グレイは身体強化してるから平気だよね。




 邸の庭についてホッとしたよ。アイラと過ごせる時間が愛おしい。アイラはすぐに魔獣熊肉を鍋で煮込み始めてみんなに振る舞った。美味しかった。アイラの作る料理はどれも初めての味なのにどれも美味しい。夢中になる。


 そろそろお別れの時間。アイラは目玉と別れるのが寂しそうだ。僕もアイラと離れるのは身を引き裂かれる思いで馬車に乗り込んだ。


「お義父さん、僕もアイラと領地に残っていいよね」


「駄目です。殿下はまだやる事が沢山あります。そしてまだ義父ではありません」


「魔法騎士団創設した暁にはアイラを魔法騎士団開発部室長にするべきだね。もうすぐ魔法塔横に魔法騎士団塔が出来るのだし」



あぁ、夢は膨らむばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る