第47話

「アーサー殿下、そろそろ私もお暇しますわ。用事がありますので。」


「アーサーってもう呼んでくれないの?」


「それは殿下次第だと思いますが」


「今から何処へ行く予定だったのかな」


「それは秘密ですわ」


「夫婦に秘密は駄目だよね。あぁ、そうか先に僕の大切な物をアイラに知って貰うといいかも。おいで」


そう言って有無を言わせない雰囲気のままエスコートされて殿下の部屋に連れてこられた。


んんっ、これはなんだ??


前回殿下の部屋には何にも無かったはずなのに今は雑貨のコレクション?が展示されてる。


「僕はアイラを見つけた時から収集しているアイラコレクション。これが僕の大切な物なんだ。ノアも一杯協力してくれてるんだよ」


えぇーーー。


完全なるストーカーじゃないか。影の無駄遣いもいい所だ。しかも兄が協力してるってどういう事!?


「僕はずっとアイラ一筋でアイラの事大好きだって分かってくれたかな。前回部屋に来る時はグレイから絶対、アイラ嬢に見せるなって全部片付けられていたんだ。普段からもグレイは捨てろっていっつも怒るんだよね。一つ一つ思い出の品だから大切にしたいのにね」


ええ。グレイの言う事が普通です。グレイは真っ当なようだ。


「実はね、アイラのデビュタント衣装の時はアイラが女神過ぎて感動して全てが上の空になってしまった。僕のせいであんな事になったのは後悔しかないよ。アイラの生涯1度のみの出来事なのに。あいつらみんな反逆罪で処刑すれば良かったよ」


…なんと。そんな事考えててフォロー出来なかったのか。


最悪だ。呆れて、何も言えん。


あぁ、王妃様の言葉が今理解できたわ。


「さぁ、アイラ、僕の大切な物を見せてあげたよ。今度はアイラの番だよ?アイラはどんな用事があるのかな?」


絶対、このストーカー王子から逃げれない気がする。


「今度の魔樹散策の為の動きやすい服装や装備を街で買おうと思っていたのですわ。一人で行ってさっと帰る予定だったのです」


「では今から一緒に行こう!」


ぐぬぬ。街に行くのに服持ってねぇぜ。口から出任せを言うもんじゃないね。


 アーサー殿下のエスコートでギルド御用達の防具店にくる。部屋の真ん中に陳列された装備に目がいく。


やべぇ、これが噂のビキニアーマーかっ!リアルで着てる人なんて見た事ないな。


「アイラはその服が気になっているのかな。意外と大胆なんだね」


顔を真っ赤にしながらどこか嬉しそうにするアーサー。


「ち、違います。あまりの露出度の高さに驚いて見ていたのです」


女剣士は露出度の高い物をみんな選ぶのかしら?私は質素な生成りのシャツとズボンを選んだ。ギルドに登録したら魔法使い部類に入ってローブや杖の装備になるのかしら?でも、ローブより動きやすさを追求する方がいいかな。


試着してみると、うん。やっぱりこれが一番かな。


「アーサー殿下どうですか?」


一応アーサーにも聞いてみる。


「アイラにとてもよく似合っているよ。僕のネックレス付けてくれてるんだね。嬉しいな。でも、ボタンを上まで留めた方が良いんじゃないかな」


「いえ、留めたくても胸が邪魔して留めれないのですわ」


「そうか…。それなら仕方ない」


アーサー殿下の顔が少し赤い気もする。洋服一式買って貰った。


「アーサー殿下、今日はありがとうございました。これで気軽に散策に出かけれますわ」


「アイラ、君は魔法が使えるからと言って余り出かけては行けないよ。僕の心臓が持たないんだからね。散策に行く時は必ず僕か家の誰かと出かけてね」


「アーサー殿下は心配性ですのね。分かりましたわ。考えておきます。ではまた魔樹調査で」


そう言って領地に戻る。疲れたわ。一日で色々あり過ぎた。


 アーサー殿下から逃げられる気がしないわ。兄が協力してるってどういう事!?父に報告だわ。正直、超絶イケメンが自分の事を好いてくれるのは大変嬉しい。が、あれは引くね。


私は会いに行けるアイドル的な感覚なのだろうか。殿下限定の。


ならもっと私を大事にしてくれてもいいと思うんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る