第19話

「アイラ嬢、せっかく海に来たのだから海に潜ってみるのはどうだい?」


「水着を持ってないのでいいです」


「では午後からでも買いに行こう」


えー。殿下は有無を言わさない感じなのね。でも海辺の街へ買い物に行ってみたい。


 アーサー殿下や本日の護衛の方、リリーが素材採取を手伝ってくれた為、予想より早く終わり、邸に戻って兄達と合流し街へ出かけた。


「リリー、これ見て可愛い。これ買う。リリー、リチャードのお土産はこれでいいよね」


侍女と一緒にウキウキしながら品物を物色、後ろから兄や殿下達がニコニコしながらついて来る。


 目的の水着屋に来ると、リリーは露出の激しい水着を持ち


「殿下、アイラ様の水着でこれはどうでしょうか?」


リリーわざとですね。リカルド殿下もアーサー殿下も顔が真っ赤です。目も泳いで挙動が怪しくなってます。


兄は『天使にそんな格好はさせられない』と即却下。結局、兄の反対により水着を買う事はせず、海を泳ぐのも中止の運びとなりました。


リリー、絶対分かってやったわよね。グッジョブ!でも、せっかく街に連れて行って貰ったお礼に明日は厨房を借りて手料理を振る舞う事にしました。



 海辺の街は外国との交易もあるようで舶来品も沢山あり、醤油や味噌、大豆を見つけました。米は少量ながらも流通していたのでこれで日本料理ぽい物が作れるわ!


乾物のお店では昆布やワカメっぽい海藻も見つけました。これは絶対買いだわ。


夕食後、厨房を借りて明日のための仕込みをした。…とは言ってもきゅうりの浅漬けと鳥肉を調味液に漬けて寝かすだけですけどね。



 次の日、兄達は剣や魔法の練習と言いつつ、手合わせをして遊んでいる間に私は厨房でジャガイモと玉ねぎの味噌汁、きゅうりの浅漬けとチキン南蛮を作った。お昼ご飯にとみんなに出すとみんな見た事のない料理に興味深々。


一口食べると無言で食べ始めた。優雅な手つきで食べる姿はまさしく王子様だわ。兄は天使、天使と言いながら食べてるけど。肉はやっぱり正義だね。みんな完食してました。


 食後はサロンで一時を過ごしたんだけど、私の魔法についての会話だったわ。そういえば人前で全力の魔法を使う所を見せた事がないわ。


兄と一緒に教えて貰っていた頃も学院でも習った最低限しか出してないし。兄達は実力が見たいのだとか…。戦闘って苦手なんだよね。明日はどうしても手合わせするらしい。



女の子相手に何考えてんだ。

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