第17話

 試験はなんとか無事に終わり、結果も発表された。相変わらずトップはアーサー殿下。2番目がリチャード。4番目が護衛の人。私ですか。私は6番目。じわりと成績が上がってました。


 そろそろ護衛の名前を覚えろって?彼の名はグレイ・ハンプシー子爵と言うそうな。護衛騎士として素晴らしく優秀なのだとか。寡黙な印象でずっと護衛の人としか目に入って無かった。


殿下の毒味役で唐揚げを食べるまでは。


相当唐揚げが好きになったようだ。美味しいもんね。味見後からたまに視線を感じるんだよね。子犬に餌付けした気分。



 さて、気分を変えて夏休みに入るまでの数日間は研究にのめり込みたい。少量の鉄を魔力で包んで魔法で熱を加えながらコネコネ。


魔法って素晴らしいね。これぞ錬金って奴ではないかしら。素材を添加したり、吹き掛けたりと様々な実験をしていく。


兄達が興味深そうに見てたから気づいたんだけど、鉄を魔力で包むって一応結界の応用かなと思ってたんだけど、結界はこの様には使われないらしい。概念が無いのかイメージでどうとでもなるのか謎よね。日本人の空想力舐めんなって所なのかしら。




 そんなこんなで授業後は研究に勤しむ日々を送り、とうとう夏休みがやって参りました。もちろん夏休みは邸に帰るので研究に必要性な物を忘れずに持って帰らないとね。


ふふふっ。私は夏休みの宿題はないんだよね。試験で成績が悪かった人は出るみたいだけど。夏休みは貴族にとって舞踏会のシーズンでもあるから宿題があっても微々たる物らしいけど。




 我が家の馬車に乗り込んでようやく帰宅。勿論兄も一緒に帰宅。上機嫌で帰って来ました。


帰ったその足で父の書斎へ向かった。


「お父様。私、アイラとノアお兄様一緒に戻りました」


すぐさま扉が開かれると涙目の父とその後ろに和かな母の姿が。ソファへ座るとピッタリ兄も横に座る。


「アイラもノアもおかえり。週末をいつも楽しみにしているのに全然帰って来てくれないからパパは寂しかったよ。ノアもアイラがいるから領地に帰って来なかったし」


父は若干拗ねている様子。


「お父様、研究室をお兄様や殿下が作って頂いたので日々研究に取り組んでいたのですわ」


ええ。研究材料を食べに来てましたよ。兄達は。


「領地の方は変わりは無かったのでしょうか?」


セバスからの報告書を受け取ると上水道は施設大部分は完成してはいるけど、まだまだ先の様だ。確か濾過に炭が必要だからと横に炭小屋作ってたよね。後で炭貰ってこ。


フローラルウォーターはすぐ出来たようで母のお気に入りになっているらしい。フローラルウォーターに光属性の魔力を注げばどうなるのかな。後で試してみよう。


それと、タオル工場に関しての報告書にも目を通す。


「皆さんの頑張りが凄くて感動しますね。タオル工場の機械も手動大変でしょうけれど、試作品の出来上がりも素晴らしい。本格的な稼働が楽しみです」


「アイラ、この休み中に海に行きたいって言ってたよね。僕と知り合いに海に誘われているんだ。海に行ってみるかい?」


「お兄様是非行きたいわ。楽しみにしていますわ」


即答してしまったわ。海に行くとなると、魚や貝等の領地にない生物が沢山居る。素材集めには持ってこいよね。あー楽しみ。


 帰宅後早々の家族会議が終了し、リリーが用意して待っていたのでそのままお風呂に入る。なんと、我が家の風呂がフローラルウォーター風呂になってた。贅を尽くした感じ。いい香りだわ。


心も身体もすっきりして一日が終わりました。



 次の日からは小屋生活が始まりました。待ちに待った研究三昧。昨日ちょっと気になってたフローラルウォーターを少し瓶に分けてもらい小屋に持ってきた。


日持ちさせる為にアルコールを添加して光魔法のヒールでいいかな。【ヒール】を掛ける。うむ。これは化粧水にしてみるのはどうだろうか。でも、ほぼ蒸留水なので効果は望めなさそうなのよね。


母に試して貰うかな。なんせ私はまだ肌がぴちぴちですからね。ちょっと庭へ行ってミントやラベンダー、アロエ、薔薇等様々な肌に良さそうな物をアルコールに付けて夏休み明ける前に本格化粧水にチャレンジしてみよう。

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