第3話〜この関係がずっと続くならさ
まぁ、その後は見事に出血多量で貧血になってぶっ倒れた。
目が覚めたら蹴鞠島チャンのマンションの中に居て、怪我の所も汚ぇ包帯じゃなくてちゃんとした包帯で巻かれていた。
「いつも甘すぎというか…昔から…」
「目の前に人が倒れていたら助けるのが警察の仕事よ。」
「おいおい、敵だぞ?そのまま豚箱にぶち込まなかったのが奇跡だな。」
「あんな状態で刑務所に送ったら、マトモな治療は受けられないと思って…いつも元気に走り回っている君が怪我していたら、パニックになるのも仕方ないわ。」
つーか、蹴鞠島チャンのベッドやっぱりいい匂いだわ。人の善意の上澄みを吸って生きてた自分からしたら、蹴鞠島チャンみたいなのは格好の餌だが…今はそんな気分じゃない。
「まぁテメェの善意で生きてるしな。感謝してるぜ?自分の唇、空いてますよ〜?」
「なっ?!なな何言ってるのよ!バカ!」
「イッテェ!ちょ、ちょっと怪我人だよ?手加減してよね。」
平手打ちしてきやがった…痛いけど、こんな日常も悪くないなって思う。
そのまま一週間ぐらいかね?ずっと安静にして食べ物あーんされ続けてたら治ってきた。怪我も良いもんだねぇ。
もう体も治ったし、今は玄関の所で蹴鞠島チャンと一緒にいるんだけど。
「もう怪我も治ったんだし元の場所に戻ったら?ほら、行きなさいよ。」
「もー相変わらず冷たい態度だな♡」
「…本当に逃がしてもいいのか?病み上がりだからすぐに捕まえられるぞ。」
こんな事を聞いてもコイツはこう答えるだけだろう。
「アタシはちゃんと正々堂々と君を捕まえたいだけだから、ヤクザさん。」
「そうかい。ならテメェの努力次第だな。へっ、そう簡単にこの自分を捕まえられると思わない方が…」
蹴鞠島チャンはずっと自分を見ていた…もしかしてバレたのか?
全身にタトゥー入れているし、髪だって脱色してパサパサだ。顔だってコケているし、服装だってあの時と違うんだ。
「…
あーあ、バレちまった。
「…
「幼馴染の姫影ちゃんでしょ?中学の時にイジメられていたアタシを助けてくれて、将来の夢は警察官って言ってたからアタシは…アタシは…目指したんだよ!」
「中学卒業から急に行方不明になったから…!アタシ、必死に探したんだよ!」
ごめんな、ごめんな。そんな立派な事はやっていないんだよ。なんで泣きそうになっているんだよ。
「ねぇ、ねぇ。姫影ちゃんでしょ?」
久しぶりに聞いたよその名前、君だけがわたしを覚えていてくれたんだな。君はわたしの夢を、名前を、馬鹿にしなかった。
「…はは、何言ってんだよ。ついに頭までイカれしまったんだな、誰だよそいつ。」
蹴鞠島チャンはわたしの腕を掴んだ。爪も綺麗に整えられている手だった。
「いや!絶対に姫影ちゃんだよ…なんで今はヤクザになっちゃったの…?」
「自分は小蘭ちゃんです。もう…行くからな。」
「ダメ!行かないで!アタシ、姫影ちゃんのお陰で警察官になれたのに…!んっ、」
わたしは振り返っていつものあれをした。これが最後だからさ。わたしは玄関の扉を開けた。扉は重かった。
「これが…最後。ごめん、今までごめん。」
自分はすぐに玄関の扉から出て、マンションから飛び降りた。下の階のフェンスに乗ってそこから歩いていった。
2日前に部下に電話を入れて置いたから、車で迎えにくるたろう。
「姫影ちゃん!…あれ、どこ?どこにいったの?お願い…!出てきてよ!」
彼女の声がマンションに響いていた。段々と歩いているうちにそれはなくなっていった。
自分は忘れるぐらいに仕事に打ち込んだ。これ以来彼女には会わなかった。会ってしまうと、こちら側に引き込んでしまうからだ。
テメェは表舞台がお似合いだからな。
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