#41 緊張の再会


 土曜日の朝


 朝は肌寒かったので、ダッフルコートを羽織って手袋とマフラーを身に着けて家を出た。

 迎えに来てくれたセージくんが私の荷物を預かってくれて、二人で手を繋ぎ、白い息を吐きながら歩いてセージくんの家に向かった。



 付き合う前も付き合ってからも、二人で歩く時はいつも私ばかり喋っていた。


 図書当番の日の帰り、初めて家まで送って貰った時も。

 ずっと私は飯塚の愚痴を零して、セージくんは相槌を打ちながら聞いてくれたっけ。 そんなことを思い出しながら歩いた。




『今日も朝から悪いな。 でもキヨカが居てくれてホント助かってるよ』


「いえいえ、気にしないでください」



 最近セージくんは、しきりに感謝の言葉を言ってくれる。


 でも私にしてみれば、今セージくんやセツナさんの為にしてることって、全部恩返しなんだよね。


 セージくんが私の唯一人の理解者になってくれて、沢山相談に乗ってくれて、いつも気にかけてくれて、アドバイスもいっぱいくれて、何かあったら言ってくれって安心させてくれて。

 他の誰にもしてもらえないような沢山の恩があるから、今わたしはセージくんたちの為に頑張れるんだし、それにそんなセージくんを間近で見てきたから、セージくんがお手本として居てくれたから、自分がするべきことが理解出来て頑張れる。


 でもセージくんは、そんな自分の凄いところ、全然自覚が無いんだよ。

 そこがまた恰好いいんだけどね。



「セツナさんとユキさん、仲直り出来るといいですね」


『そうだなぁ でも、二人の問題だし、俺たちは見守ることしか出来ないしな、なるようにしかならないよ』


「うん。 でも、もし無事に仲直り出来たら、セツナさん、前を向いて頑張れますよね」


『だな・・・でも、もし仲直り出来なくても、そろそろ前を向いて欲しいかな』


「その時は、私たちで支えて行けばいいですよ」


『キヨカは、ホントに頼もしくなったなぁ。 2年の最初のころはかなりネガティブだったのにな』


「むー、今日のセージくんはお喋りさんですね」


『う~ん、ちょっと緊張して落ち着かないのかも』


「ふふふ、セージくんでも緊張することあるんだね」


『まぁね・・・』


「そうだ、今日セツナさんたちが上手く行ったらしたいことがあるんですよ!」


『したいことって、この荷物?』


「そうです! 何をするのかはお楽しみです!」


『分かった。楽しみにしとくよ』








 セージくんのお家に9時前に到着した。

 ユキさんは10時頃に来る予定。


 ユキさんが来るのを3人でリビングで待つ。


 セツナさんは緊張していると言うよりも、ソワソワと落ち着かない様子で、私に「この服、派手じゃないかしら」とか「お茶とコーヒー、どっちがいいかしら」とか、頻りに聞いてきてて、私も「服はそれで大丈夫です!お茶の用意は私がしますから! 少しは落ち着いて下さい!」と励ました。



 約束の時間の10分程前にバイクが家の前で止まる音が聞こえ、セージくんが窓から確認すると「ユキさん、バイクで来た」と教えてくれた。


 それを聞いたセツナさんは立ち上がると、両手の拳を握りしめて玄関へ向かい、自分からユキさんを出迎えに外へ出た。


 私も後に続いて行くと、フルフェイスのヘルメットを抱えたユキさんが丁度インターホンを押そうとしていたところで、セツナさんもユキさんも互いを見合って固まっていた。



10秒ほど時間が流れ、最初に口を開いたのはユキさんだった。


「セツナちゃん、久しぶり! 元気にしてた?」



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