#26 キヨカとねーちゃんと浴衣




 これまで何度も述べてきたが、俺とキヨカは読書好き。

 そもそもキヨカと友達になった切欠でもあるし。


 二人が好きなジャンルは、文芸書。

 現代社会の恋愛とか青春とか日常とかそういうのを描いた小説。


 そして、二人とも紙の本に拘りがある。

 ハードカバーでも文庫本でも。


 なので図書館や本屋好きだし本屋巡りにも二人で良く行く。

 二人とも本屋さんとか行くと、平気で1時間でも2時間でも時間潰せちゃうタイプ。



 そして、キヨカがウチに来ると二人でよく書庫に籠る。

 クーラー効かせてソファーでぐでぇってなりながら2時間3時間と読書して、お腹空いたら自分たちでご飯作って食べて、んでまた読書続けて、日が暮れるまで部屋に籠る。



「ふぅぃ~、読み終わりましたぁ」


『お疲れ様。今日も本読んで一日終わっちゃったなぁ』


「いいじゃないですか、こんなに平和で幸せな時間、贅沢ですよ」


『まぁそうなんだけどね。 でも、もうすぐ夏休みが終わるんだし、もう少し夏らしい過ごし方をしても』


「それなら、前に夏らしいことしたじゃありませんか!」


『え? あー水着のお披露目?』


「そうですそうです、ヘンタイセージくんが大喜びの」


『あれはあれで楽しかったけど・・・夏らしいか?』


「確かに・・・自分で言ってて、アレを夏らしいイベントっていうのは、ちょっと虚しさを覚えますね・・・」




 そんな不毛な会話をしていると、ねーちゃんがやって来た。


「キヨカちゃん、晩御飯食べてく?」


「あ、はい!頂きます!」


「じゃあ、今から作るね。 今日お母さん遅いらしいから」


「なら私手伝いますね!」


「うん、お願いね」


 3人で台所へ移動して晩御飯の準備を始める。

 因みに俺は、食卓に座って見てるだけ。


『ねーちゃん、今日の晩飯ナニ作るの?』


「回鍋肉とポテトサラダと、あとは野菜スープかな」


『今からそれだけ作るの、大変じゃない?』


「大丈夫よ、そんなに難しくないから」


「私とセツナさんの二人掛かりなら、あっという間ですよね!」


「うふふ、そうね。キヨカちゃん頼もしいものね」



 こんな風に、キヨカとねーちゃんが二人で協力して晩御飯を用意するのは、今までも何度もあった。

 こういう時間のお陰か、今では二人ともすっかり仲良くなってくれている。



 そんな光景を眺めながら雑談をする時間が、なんだか感慨深くて結構好き。

 数年前のねーちゃんが引きこもってた頃じゃ、ここまで回復するなんて想像も付かなかったし。




『ねーちゃん、夏らしいイベントって言ったら、何があるとおもう?』


「夏らしい? う~ん、花火大会とか海水浴? あとはキャンプとかね」


「海水浴とキャンプは、インドア派の私たちにはムリですねぇ。 花火大会は終わっちゃってるし」


『やっぱり、もう俺たちの夏は終わってるのかな・・・』


「じゃあ、バーベキューとかは? お庭でも出来るわよ? あ、あと花火大会じゃなくても内輪でやる花火だって出来るわね」


「なるほどなるほど・・・花火ならアリですねぇ」


『それじゃあ、明日にでも花火買いに行くか』


 そんな雑談をしてたら食事の準備が終わってた。

 二人で手分けして料理してたお陰か、思ってたよりも早く、1時間もかかってなかったと思う。



 そして3人で食事をしながら


「そういえばセツナさん! 浴衣持ってますか?」


「多分あると思うけど・・・大分昔のよ?」


「食事終わったら一度サイズ合うか併せてみませんか? もし着れそうなら花火の時に着ましょう!」


「え?私も花火するの?」


「もちろんですよ! 言い出しっぺじゃないですか! ねぇセージくん?」


『そうだねぇ。ねーちゃんも一緒に花火しよう』


「うん、わかった。 じゃあ後で浴衣探してみるわね」



 こうして、夏休み最後に3人で花火をしようってことになった。

 因みに、ねーちゃんはニートだから年中夏休みだけども。





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