#24 ケンカするほど仲が良い





 夏休みに入ると、キヨカと毎日一緒に過した。


 お互いドチラかの家で宿題やったり読書したり。

 二人とも読書好きなだけあって、基本的にはインドア派なんだよね。




 そんな夏休みを過ごしていると、キヨカもウチの家族とは大分馴染めている様で、母親ともねーちゃんとも普通に会話するようになってる。


 ただ、そうなってくると、ウチのねーちゃんには色々NGワードがあるので、それをキヨカにはしつこく教えた。

 ねーちゃん、情緒不安定だから一度落ち込むと、復活するまで凄く大変なんだよね。



 高校退学直後は完全に引きこもりになって、部屋から全然出てこなくて一日中スナック菓子とか食べてずっと風呂にも入らなくて酷い有様だった。

 1年くらいしてようやく部屋から出てきて外も出歩く様になったと思ったら、今度は警察から連絡入ってまた半年くらい引きこもりに。


 去年くらいからようやく落ち着いてくれて、毎日風呂にも入る様になって暴飲暴食も止めて容姿も以前の様に気を付けるようになり、体形とかも大分戻っては来ている。


 ねーちゃんが引きこもりになった当時、俺、中学生で、そんなねーちゃん見るのがホント辛くて、その辺の話をキヨカにも説明した。


 キヨカも飯塚絡みで色々と鬱屈した思いを経験しているからか、その辺りは神妙に聞いてくれて、ねーちゃんに対しては凄く気を遣って上手く対応してくれてる。 ただ、流石にねーちゃんが退学になった事件に関しては話していない。 話せるような内容じゃないし。


 というか、そんな風に繊細な対応出来るなら、俺にも普段からそうして欲しい物だ。






 ねーちゃんのコトよりも、俺たちの夏休みのことだ。


 クーラー効いてる部屋であまり引きこもってても、健康的では無い。


 それに、二人っきりで閉じこもってると、誰かさんがいちゃいちゃし始め、そんで発情するから結局汗かく。



 因みに俺んちではエッチはしない。

 ねーちゃんが高確率で隣の部屋に居るからね。


 する時はいつもキヨカの部屋だ。

 というか、キヨカの部屋に居ると、キヨカに毎回押し倒される。



 そんな俺は、たまには外に連れ出そうと、提案することにした。



『キヨカさんや』


「なんでしょうか、ダーリン」


『ダーリンって呼ぶの、いい加減止めない?』


「仕方ない我儘セーくんですねぇ」


『いや、セーくんって言うのも、止めない?』


「もう!なんなんですか!さっきから!」


『いや、それはこっちのセリフなんだけど? 俺はただ、引きこもってばかりじゃなくて、外にも出かけようぜ?と言おうとおもっただけで、そしたらキヨカがダーリンとかセーくんとか言いだすから』


「じゃあなんですか? 私が悪いっていうんですか? あーそうですかー、そりゃどうもスイマセンデシター」


『お前なんなの? いっつもすぐ興奮してつっかかってきて、やっぱり拗らせぼっちの飯塚と似てるよな!』


「なんでココで飯塚が出てくるのよー! あんなクソぼっちと一緒にするなー!」


 キヨカはそう叫びながら、グーでポカポカ殴って来た。


 いくら殴られ痛いからと言っても、女性に手をあげるのは俺の信念に反するので、仕返しはいつもの脇腹こちょこちょだ。


 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ


「うっ!、ヤメテ! くすぐったい! ホント、ヤメテ!」


 こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ


「ごめんなさい! もう許して! ホント、ごめんって!」


『ヨシ、分かればよろしい』


「うう、くやしい・・・」



 ようやく大人しくなったキヨカを抱き寄せ、目を見つめながら

「キヨカは、笑っていた方のが可愛いよ。 怒ってたら勿体ないよ」

 と、そう囁いてキスする。





 この流れ、夏休みの間だけでも10回くらいやってる。

 キヨカ曰く「最後の抱き寄せられてからのキスが凄くぞくぞくする☆ 落してから甘く持ち上げてくれるのがたまらない♡」そうだ。

 因みに、キスじゃなくて頭をなでなでするパターンもある。


 多分だけど、キヨカはそのぞくぞくを味わいたくて、俺をワザと怒らせようとしているんじゃないかって思い始めてる。

 だから最近では「あーまたつっかかってきて、最後キスして欲しいんだな」と分かってて乗ってあげるようにしている。


 流石はキヨカ、ドヘンタイ。

 やっぱり変な奴だ。









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