第4話 廻る毒 巡る世界
第4話
あれから数年が経ち、俺達は上級生となった。
ピカピカの六年生である。
そして、思春期が始まる時期でもあった。
故に…
「おいおい、また一緒に居るぜ。」
「夫婦かよ!」
「ヒューヒュー!」
俺達はよくからかわれていた。
友達は朱里しか居ないから、別に俺自身に言われる事自体は何とも思わなかった。
むしろ、『何か煩いなぁ…』程度である。
しかし、朱里が何かを言われるのは我慢ならなかった。
だが、奴等に何を言っても無駄なのは知っている。
どうした物だろうか?
彼女が侮辱され、傷付かない方法は…
そうか!
「俺が離れれば良いんだ!」
そうすれば、彼女は傷付く事はない。
我ながら、名案である。
少し寂しいが、仕方がない。
そう決めたその日から、俺は彼女から離れていった。
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表朱里side
むぅ、リュー君が最近よそよそしいなぁ…
まぁ、大方周りの猿どものせいなんだろうけど…
(返して!)
おや、また戯言が聞こえるなぁ…
煩いし、無視無視っと…
(私の身体、返してよ!)
ちっ、面倒くさいなぁ、もう…
「私の身体?
本当に腹が立つ。
もう、さっさと消してしまいたいよコイツ…
でも、今は我慢しなきゃな…
ちゃんと、狙う時に狙わなきゃ…
これは私自身の闘いであり、復讐なのだから…
「まぁ、リュー君の方は大丈夫でしょ。」
私の毒は既に廻ってるのだ。
どれだけ離れても、どれだけ拒絶しようとも…
「リュー君は必ず私の所へ戻ってくる。」
これは絶対であり、確信だ。
この世界線に邪魔者はいない。
漁夫の利したリュー君の同類も…
キャピキャピした占いギャルも…
私とリュー君の可愛い義妹ちゃんも…
個人的に忌々しい双子姉妹も…
誠に遺憾ながら私と同じ幼馴染も…
…この世界には居ないのだ。
だから、負けない。
…少なくとも、この世界では。
「もう少し待っててね。直ぐに君達の番だから。」
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竜馬side
朱里から離れた俺は、物凄い後悔に襲われていた。
常に溺れている様な感覚なのだ。
息ができない、彼女が居ないだけでこんなにも…
「大丈夫、リュー君?」
彼女の声が聞こえる。
振り向くと、女神の様に優しい顔をした彼女が立っていた。
「気にしなくても良いよ、リュー君。」
「えっ、朱里…」
「リュー君と一緒に居る限り、私は傷付かない。むしろ、一緒に居られない方が傷付くんだよ?」
そ、そんな…
じゃあ、お、俺がした事は…
「大丈夫、私が許してあげるから。だから、自分を責めないで。」
「で、でも…」
「でももラッキョウもないのです。これからずっとずっと一緒に居ようね、リュー君♪」
「うん…うん!」
こうして、俺達は再び一緒になった。
もう二度と離れないという誓いを胸に。
続く
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