第285話 刈谷の戦い

285刈谷の戦い3


 織田信勝


 「相手の正面の兵力がさらに押してきます!それと義元の周りの兵や後方の兵が一部を除いて左翼と右翼の裏に入ろうと動いております!」


 くそ!このままでは左翼と右翼の援軍にも行けずただ踏み潰されるだけだ。しかし、逆に義元本陣はこれによって薄くなっている。


 「今少し踏ん張る様に指示をしろ!後少しだと!」


 柴田や丹羽だけでなく佐久間や前田、森など兄上に従った将達が奮闘してくれている。それと未だに油壺の様なものが見当たらないということは今川は最初の一度きりしか使うつもりがなかったのだろう。


 実際、あれから押し込み続けて自分たちから油壺を使いづらくしている。その上、火矢をいかけようともしない。


 「騎馬隊を戻して左翼と右翼の援護に当てさせろ!それと油を被ったもの達も戦線へと戻せ!総力戦だ!我々も陣を前に移すぞ!周りの将兵達に覚悟を見せるのだ!」


 信勝の檄に打たれた各将兵は改めて覚悟を決めて今川軍を押し戻し始めていた。


〜〜〜


 織田信長


 後方の騎馬隊と合流した信長は馬を乗り換えて忍び達が持ってきた情報を確認していた。


 「そうか、信勝は陣を前に出したか。俺でもそうする。」


 「いい将に育ちましたな。」


 この場には毛利新介などの元々桶狭間に向かった兵だけでなく柴田勝家、森可成など猛将が揃った精鋭部隊だった。正面兵力の柴田は柴田軍ではあるものの他のものが率いていた。


 「うむ、お主ら!命を捨てる覚悟で義元の首だけを狙って駆け抜けろ!義元以外の首は打ち捨てるのだ!!!」


 「「「おう!」」」


 信勝達が作ってくれた義元の陣の隙をつくために駆け足くらいで今川軍が見えるまで駆ける。駆けている間に曇り空だった天気が雨に変わり、こちらの視界を悪くする。


 「天はこちらに味方したぞ!これで駆ける音も姿も確認しづらくなる!俺たちはこのまま義元の白傘目掛けて駆け抜けろ!」


 義元の本陣だろう箇所を見つけた信長は馬を駆け足から全速力の状態へと移行した。それに釣られて周りの騎馬隊も速度を上げる。信長の少し離れたところには柴田と森がそれぞれの騎馬隊を率いて突撃していた。


 「いけえええええ!!!」


 信長達の別働隊が今川義元本陣5000に噛み付いた瞬間であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る