第261話 武田vs村上


 1552年8月


 時は少し遡り、信長達が頑張っている頃である。丁度、武田軍が南信を抑えに行った1448年の侵攻から4年後の今、第二次領地拡大戦争が起きようとしていた。


 「皆の者、良くぞ集まってくれた。4年前に南信や中信を抑えた事で我らが武田もだいぶ良くなってきた。そして、今こそ我らの力を結集して信濃を抑える時が来たのだ!北信を抑えることさえできれば甲斐、信濃の2国を抑える大大名となる!良く励んでくれ!」


 「「「ははっ!」」」


 史実で起こったはずの上田原の戦いは起きずに木曽福島侵攻が先に起きた。その分が今、回ってきたのであった。


 秋山、穴山、馬場、飯富、山縣など歴戦の猛者や家臣達と戦略について再確認する。


 「では、まず木曽福島側からは飯富殿を大将として、山県殿、馬場殿を副将とし3000の兵を持って林城へ侵攻します。松尾城、高遠城の兵3000を持って穴山殿は上原城へ、御屋形様は本拠地と上原城の兵4500を率いて武居へと穴山殿と共に禰津へと向かい村上に対して二正面の選択をさせます。また、北条に援軍を求め、小諸城へと攻め入って貰います。その際、穴山殿に小諸城を挟撃して貰うのが第一段階です。同時に御屋形様には砥石城、馬場殿、穴山殿に林城をせめて貰います。小諸城を落とした後は抑えの兵として負傷兵と将を一人置いた後御屋形様に合流して貰い砥石城に攻めかかって貰います。最後に林城側から更級に攻め入って貰い葛尾城を挟撃し北信制圧を終えます。何かご質問のある方はいらっしゃいますか?」


 最終確認のため誰も疑問を呈さない。


 「また、北条殿には可能な限りついてきて貰い、できますれば戦線にも投入したいと思います。そこは、御屋形様の手腕にお願いいたしまする。また、同盟を結んでから定期的に安く購入した北条からの米のおかげで我々の兵糧に不安はございませぬので今までのように焦りながら攻める必要はございませぬ。皆々様の思うように攻めてくだされ。」


 あちこちから、ほぅと声が上がる。

 武田の強さは餓えから逃れる為に生まれるものだと信玄は考えている。それが今までよりも無い分どの様な戦模様になるかは読むのが難しくなっていた。生き残るための決死の覚悟がない兵達は今までの様に精強な兵でいてくれるのであろうかと、その一方で北条からの米や農法が流れてきた事による人口の減少に歯止めがかかり史実よりも増えた兵の数によって武田軍が簡単に万の兵を動かせる事における期待もあった。その心配を他所に国人達は顔に笑みや安堵を浮かべて浮かれていた。


 「うむ。此度は領地に残す領民達にも十分な米が行き渡っているため領地に帰ってきても不満が溜まることはないであろう。その分、負けは許されない。ワシの策に従えば勝利は確実じゃ。今までのように決死の覚悟で挑んでくれ。」


 「ははっ!」

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