第246話 鳴動
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「何?其方が尾張へ向かうのは許可出来ぬぞ?」
父氏康は息子である氏政が尾張の情勢を知らせると共に弔いの使者として向かいたいと上奏するのをぶった斬った。
「はっ、それは重々承知しております。言ってみるのは損では無いので試してみただけにございまする。本題といたしましては、今こちらが動かせる重心としては里見義堯、富永直勝のみにございまする。ですので、この両名を弔いの使者として向かわせる事に許可を頂きたく。」
氏政はそんな事は分かりきたっていたので特に反発することもなく淡々と話を進める。
「ふむ、それならば良いだろう。但し!今川と武田とは同盟を結んでいることを忘れるでは無いぞ?織田を重視しすぎて2国との関係を悪化させたのでは意味がないのは言うまでも無いな?」
また、こやつは変なことを言っておると氏康は心の中で呆れながら織田と今川を両天秤に掛けていた。順当に行くならば今川に織田は滅ぼされてしまうだろうが、我らが駿東を抑えている点、織田が息子の影響で力を持っている点からどう転ぶか分からないとほくそ笑んでいた。
「はっ!」
父の心を知ってから知らずか氏政はどうなっても良いように策を既に打っていたのであった。
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1552 4月 織田信秀葬儀 数日前
里見義堯 富永直勝
「北条氏政が配下 里見義堯にございまする。此度は急な訪問にも関わらず受け入れていただき感謝いたしまする。」
義堯は直勝と共に那古屋城で弔いの言葉を述べ挨拶をしていた。評定の間には織田信長が喪主として挨拶を受けており、その横に信勝と奥である土田御前が控えている。信勝側には保守派や旧態依然とした既得損益を守りたいものたちが、その反対には信長のカリスマ性に集って集まった新参者や信長の実力を知っている古参の武士たちが控えていた。
「うむ、こちらこそ親父殿の葬儀に氏政の重臣であり、北条家の重臣でもある里見義堯殿に来ていただけ感謝しておる。今夜は細やかながら宴の準備もしておるゆえ、ゆるりとされるが良かろう。」
「はっ!感謝いたしまする。公式なものとは別に私的な手紙を我が主人から預かっておりまする。この場で渡したほうが良ろ…」
「良い、貰おう!」
信長は義堯が言葉を言い終わる前にスッと立ち上がるとさっさと義堯の前まで動いた。義堯も動ずることなくスッと懐から氏政の手紙を持つと信長に渡した。
「ふむ、ふむ…なるほどな!仔細承知した!」
信長は獰猛な笑みを浮かべながらあいわかったとスタスタと元の席に戻っていった。その場はこれでお開きとなり義堯一行は客間に案内されたのち北条に学びに来ていた佐久間達と旧交を深めながら宴会が終わるまでひと時の休息を楽しんだのであった。
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