第220話
冷たく突き刺さる様な風を肌にあびながらもその風を利用してグングンと前に進んでいく。氏政達は寄り道もせずに京へと一直線に向かっていた。本来ならば尾張などに寄り信長に会って行きたかったりしたのだが急なスケジュールによって不可能となっていた。それに、京へと向かえば三好長慶に会えるため悪くないとも考えていたのだ。
「そういえば、普段から京に向かうときに海賊衆とかに襲われたりはしないのか?この見た目と速さであればちょっかいをかけてくる馬鹿も居ないとは思うが。」
現在の和歌山や紀伊半島の先には海を生業とする海賊達が住み着いていた。紀伊半島は中々に特殊で寺と海賊が大きな力を持つ場所であったのだ。
「はい、確かに最初の内は襲撃に何度も合いました。しかし、その度に跳ね返しておりましたらいつしか我々に手を出すものは居なくなっていたのです。」
この船の乗組員の中でも比較的に高い教養を持つ、普段副船長を務めることが多い男がそばに着いていた。
「なるほどな、ガレオン船に小早や安宅で対抗しようと言うのも馬鹿らしいからな。だが、相手の的が小さい分大砲は使えぬし難しい作業だったのではないか?」
「勿論大変でした。しかし、船員達が起点を利かせたおかげで何とかなりました。」
「ほう、どのようにしたのだ?」
「大砲に使う火薬を入れた樽を相手側に流し、鉄砲使いが敵の近くで撃ち抜くことで爆破の衝撃などで撃退したのです。また、そもそも海賊が出る海域より遠目を運航したり、速度を上げる事で取り付け無くしたりして彼らをかわしていました。」
「なるほどな、陸の上に居る我々では思いつかないような対処法なわけだ。面白い話を聞けた。ありがとう。」
副船長は頭を下げ持ち場へと戻っていった。
「さて、これほどの大船団と軍、簡単に通してくれるかな?」
「通してはくれると思いますが、その後が問題ですな。公方様が癇癪を起こさなければ良いのですが。」
幸隆がやれやれと言うような様子で肩をすくませながら氏政の言葉に答える。
「これだけの軍があれば沿岸を焼き尽くして城を接収することなぞ簡単だからな。三好は勿論警戒しているだろうし、足利も利用したがるだろう。」
義堯が補足する。
「まずは、堺に向かうのであったな。」
「はい、そこで兵士達に休息を取らせた後に京へ向かって進みまする。その休息をとる間に…」
「わかっておる。小太郎から連絡は?」
「はっ、既に準備は整えたと。」
幕府や朝廷に向かう前に氏政は三好氏の者と接触するつもりであった。三好長慶に会えるとは思っていないが、三好三人衆の何れかにでも会えれば、特に鬼十河や松永久秀に会えれば嬉しいと考えていた。
「ならばいい。楽しみだな。」
〜〜〜
同時期 三好長慶
「北条の倅が上洛のために堺に向かっている件についてだが誰が向かうべきだと考える?」
長慶は重臣達のみを呼び今回の会談についての打ち合わせを行っていた。ここに出席しているのは三好三人衆に松永兄弟など錚々たる顔ぶれだった。
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