第200話
200という節目であり34万文字も超えました。
就活も始まり忙しくなってきたので投稿スピードさらに落ちます。週2回 水曜と日曜になります。ご了承ください。
「しかし、我々には支払うようなものはほとんどないのだが、なんとかその米を頂くことはできませぬか?」
40代の領主が困り顔で、しかし、上から目線にならないように頼み込んでいた。蠣崎家臣たちはその姿を目を逸らさずにじっと見ていた。彼らは理解していたのだ。ここで米をもらうためには屈辱的であろうとも這いつくばってでも米をもらうしかないのだと。
「そのようなことは気になされるな。我々の話を聞いてその上で協力できそうならして欲しいだけでございます。まずは米をおろすために港を使用させて頂くことはできませぬか?話はその後でもできまする。」
「は、はぁ。」
蠣崎季広は義堯達にすぐさま許可を与え船から荷下ろしを始めさせた。荷卸しに関しても現地民を銭で雇い彼らに米を買えるように取り計らった。また、食事を付けることで参加意欲を刺激していた。これらの一連の流れを見た蠣崎は驚きと羨望が溢れ出ていた。
上方、とまではいかないが本州屈指の大大名はこのような豊かさを常日頃から当たり前のように享受しているのかという事に激しく羨ましく感じたのだ。荷卸しが順調に行っているのを確認したのちもう一度義堯達の話を聞く事になった。
「さて、我々が望む事ですが、まず先にお聞きしたいことがございます。蠣崎殿は現地民のアイヌと呼ばれる方々と最近和睦を結びこれから関係改善に務めるとお聞きしておりますがいかに?」
「ええ、その通りにございます。よくご存知でしたな。」
「はい、こちらにくるまでに南部や伊達といった方々と取引をしてきましたのでそこで耳にする機会がございました。」
実際のところは氏政による情報なのだがへんに相手を刺激することもないと黙っておいた。
「そこで、我々とアイヌの民の橋渡しをしていただきたいのです。我々は取引や交易は蠣崎殿とこれからも行っていきたいと思っております。その上で蝦夷地の未開拓の部分を我々で開拓したいと考えているのですがその際に現地民との意思疎通が問題となります。そもそも、彼らにとって開拓する土地が使っていい土地なのかどうかも分かりませぬのでよければお手伝い願いませんか?」
蠣崎が抑えているのは蝦夷地、つまり北海道の道南部分のその先ほどである。北条が押さえたいのは札幌や帯広それに稚内や樺太である。
そこを手に入れることができれば蠣崎は安心して北条に臣従できる上に、南部などを攻めることも容易くなる。
「それは構いませぬが、見ての通りここの土地は不毛の大地です。米などは取れませぬし…」
蠣崎としては思いつきでこの土地に来て無理難題を自分達に押し付けられては困ると言う気持ちであったが相手に直接伝えるわけにもいかずしどろもどろしていた。
「勿論、そちらに迷惑はかけませぬし人手を借りたい時は米をしっかりと支払います。それを約束する書類もお持ちしております。ここに我が主人氏政様の血印がございます。お持ちくだされ。」
「なんと!そこまで用意されておられたのか。」
「ええ、それに我々はこの寒い大地でも大量の食糧、余るほどの食糧や特産品を整備する準備がございます。もし、成功すれば蠣崎殿にも交易でお渡ししますので是非ともご期待くださいませ。」
蠣崎季広は頭を回転させていた。義堯は嘘を言っている様子もなく淡々と事実だけを述べている。その食糧を増やす方法とやらを教えてもらうには従属もしくは臣従するしかないだろうが今北の大地に基盤をもたない北条についても現在半強制的に従属させられている安東が黙ってはいないだろう。なれば、ここで北条の基盤を作る手伝いをしながら蠣崎の価値を上げた上で臣従するのが正解か…。
蠣崎にとって米は取れずに、足元を見られながら搾取され続け現地民との争いも絶えない領地が豊かになるならば独立していなくても…と考えてしまうくらいには追い詰められていた。
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