第3話
長久保城で幻庵から文字の書き方や文化、歌や茶について学んでいると、あの件について結果が出たらしく幻庵から手習の後に報告があった。
「実際に見にいった山師が金山を見つけたらしいですぞ。やりましたな。」
「よくやったな!!!その山師はなんと言う名なのだ?」
「確か、風魔と名乗っておりますな。山師として修練を積んでいたはずです。」
なんと!!!この時代にはまだ北条に仕えておらず、幻庵の知り合いというか雇っているだけなのか。土地をもらって自分で自由にできる金が入ったら、父の手が付く前に家臣にしたいな。
「これからも風魔とやらを使うかもしれない。今度からは俺から直接頼んでもいいか?勿論城代を任されてからだが。」
「ええ、勿論構いませんが、山師は卑しい身分と周りから見下されておりますぞ。松千代丸様の周りがなんと言うか。」
「はっ、言わせたいやつに言わせておけばいい。そういうじぃだって風魔を使っているだろ?」
「はて?なんのことやら?」
俺は一度報告も兼ねて小田原に戻る事となった。じぃの手紙を渡され、父にお目通りをして城代を任せてもらえるように頼む。
そうと決まれば俺は急いで連れてきた兵と共に小田原に戻る。そして戻ったらそのまま父のいる評定の間に向かう。
「失礼いたしまする。北条松千代丸ただいま戻りましてございます。」
そう言って頭を下げる。
「今は評定もしておらず、人払いもしておる。好きに話しても良いぞ。」
「では、今回の反応はどうなると思いまするか?」
「そうだな、前の報告にもあったように、周りはお前のことを八幡様の御使いとして一目を置くようになると思う。ある程度自由にさせても大丈夫なはずだ。侮られたり邪魔をされる事はないと思うぞ。」
「ならばお願いがございます。名目上でよろしいので伊豆を任せて頂けないでしょうか?韮山城の城主として認めて頂きたいのです。そして、実務については元からいた者に任せまする。」
「ふむ、それは幻庵を補佐につけて実務を任せるといえば大丈夫だと思うが、お主自身はどうするのだ?」
「私自身は将来の手足となる家臣を集め、職人町の者たちを数人韮山の城下に連れて行きます。そこで様々な役立つものを作り上げたり、農業改革に勤しみます。
といってもいきなり全てを変える訳ではなく、まずは試験的に韮山の田や畑を使いまする。結果的にうまく行けば伊豆中に広めまする。
そこでも敵方に漏れないように最新の注意を払いまするが、父上とじいの素破や乱波でバレないようにしていただきとうございます。
できればこの事を知るのはほんの一部にして頂きとうございます。味方にも。」
「なるほどな、お主の手法を広めるときに名目上でも大将の方がやりやすいと…」
「そうでございまする。それに家臣を増やすときに城主の方が勧誘がしやすいかと。」
「わかった。できるだけは要求は通るようにしよう。」
その次の評定の時に皆の前に呼ばれて、今回の成果についての報告と褒美を言い渡される。
評定には名前を聞いたことがある有名人がいる。北条三家老衆の松田盛秀、大道寺盛昌、遠山綱景、そこに5家老のうち軍師の多目元忠、北条綱成、富永直勝がいる。あとでこの3人とは話をしたいな。
「この度、我が嫡男松千代丸が八幡様から頂いた知識を使い、土肥に大きな金山を見つけた!この成果は隣国で有名な甲州金に勝るとも劣らないもので、埋蔵量に至っては日の本1.2を争うとのことだ!
これを機にいささかというか大分早いが、実績を積ませるために韮山城を任せ伊豆を差配させる!だが実務をするにはまだまだ経験が足りない!そのため傅役の幻庵を補佐につける!他の支城の城主も力を貸して愚息を助けてやって欲しい。」
そう言うと、土肥を領地に持つ5家老の富永直勝が真っ先に、
「はっ!身命を賭して松千代丸様を支えさせて頂きます!」
と宣言して伊豆衆の者達が続いて申し出てくれる。それを聞いた父氏康は頷いて、
「皆の心持ちに感謝する!」
と告げた。
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