短歌がもとの短編小説

アチャレッド

第1話 何気なく 「送っていくよ」と言ってみる 目に焼きついた 君の横顔

 いつもバイトは深夜に終わる。

その時間の方が稼げるしこの時間に仕事するのが大学生の利点だとも思う。

 バイト先にはいつも一緒にバイトする少女がいる。

彼女も大学生だから同じくらいの頻度で深夜の時間にバイトをしていた。


 その日は珍しく彼女と終わるタイミングが重なり、途中まで歩くことになった。

信号で足を止め、信号が変わるまで話をした。

多分いつもなら信号が変わったら「お疲れ」と言って帰ったと思う。

けどその日は何気なく、「時間遅いし、送っていくよ」と言ってみた。

少女は一瞬目を丸くして直ぐに「ありがとう」と言い、目線を前に戻した。

延長された帰り道で無意識にパッと少女の方を向いてみる。

すると目線の先の少女は少しマスクをずらして小さく笑い、頬を赤くしていた。

直ぐに目線を外したが、その横顔が目に焼きついて離れることは無かった。


 次の日になっても少女の横顔が頭から離れなかった。

あれはどんな表情だったのか。

判断するにはまだ材料が足りてない。

だから今日も帰り道、信号が変わったら聞いてみる。

「あ…時間遅いし、今日も送っていくよ。」

多分だけど、今日も彼女の表情は目に焼きついて離れないと思う。

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