【Ex】座談

「中の人が書く気が底辺らしいぞ」

「え、そんな話ある?!」

「あまりにも書きたくなくて、読み漁り現実逃避をしていたらしい。時間も迫ってきたし、何か話してよ、だと」

「いやいやいや、やりたくないことは最初にやるできだよね?」

「世の中、そんな人間ばかりじゃない」

「うっわ! 急に悲観し始めたね、ゲンさん」

「いろんな人間を見てきたからな」


「ちょっと気になってたんだけどさ、ゲンさんって何歳なの?」

「…………」

「悩むことなの?」

「人間の尺と一緒にしてくれるな。これでも中堅ぐらいだ」

「いやいやいや、精霊の基準を言われましても。うんじゃ、いっちばん古い記憶だと人間は何してたの?」

「…………石で矢尻を作っていた気がするな。自分よりも大きなものに立ち向かう非力さが不思議だった」

「相当、昔だよね、それ」

「見えるようになった時の記憶だがな」

「えっ」


「あ、ごめん。生まれたばかりのカワウソ思い出してた。えーと? あと400字ぐらいだって」

「とりあえず、自己紹介でもするか」

「今さらじゃない?」

「じゃあ、何をするんだ」

「旅の心得とか? 異世界旅ってうたってるのに全く異世界感ないし」

「まぁな。蛙なんて田舎話中の人の地元の延長で、箱に至っては調べものネットサーフィンで行き着いただけだしな」

「フィッシュサンドなんて何処にもあるよね~」

「あのフレッシュサンドはあそこでしか食べられないぞ」

「はいはい、食いしん坊なんだから。んで、なんだっけ」

「旅の心得を話すのではないのか」

「食べ物を大切にする! かな!」

「別に旅じゃなくてもいいだろう」

「えぇー。安宿の見付けるコツとか?」

「お主の勘は当てにならんがな」

「精霊とのつきあい方とか?」

「森羅万象を相手に通ずると思っているのか」

「ぜーんぜん! 結論として、私たちの旅って何の役にも立たないね?」

「楽しんでいるからいいんじゃないか」

「そうだねぇ。『楽しむ』が一番かな」

「疲れたら休めばいいしな」


「とりあえず、ご飯にしよう、ゲンさん」



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