閑話 インタビュー 4
シュテリアさん、おはよう。
と言っても中の刻の終わり、日は沈んだ後だけど。
「聖者様は夜にしか現れないという噂ですが、なにか理由があるのでしょうか」
おっと、いきなり取材か。さすが記者さんだな。
理由というより俺の体質のせいかな。日光を浴びると日焼けが酷いんだ。肌が弱いと言うのかな。だから夜しか活動していないんだよね。
「……聖者様。わたしは何百何千という人々にインタビューをしてきたので、嘘か真かの区別はつくつもりです」
うぐぅ。だけど言えるか! ヴァンパイアだから日光に弱いなんて弱点、簡単に言えるか!
百年くらい前にこの世界に転生してきた時の俺は
「正直にお答えください。神が眠る夜の闇を照らすために頑張っておられるのだと!」
何言ってんの?
ま、まぁ、そういうことにしといて?
「主~、腹が減ったぞ」
屋敷の外にいるグロアが立ち上がり、窓越しにエサを要求してきた。あんた自分で森に行ってエサ獲ってこれるでしょうが!
「主の作った食事を味わったら、もうあの生活には戻れぬよ。他の獣王たちもそう言ってる」
俺、自分の敷地に動物園を作るつもり無かったんだけどな。
「あ、あ、あの、聖者様。外にいるのは、ま、まさかマイラの女王と呼ばれている獣王グロアでは!?」
うん。他にも獣王(笑)がいるから後で見に行くといいよ。
「い、い、いえ。それは怖……遠慮しておきます、はい」
いい奴らだよ? 人間を襲ったりしないし。
「おーい聖者! 私のパンツまだ乾いてないんだが。ん、客人か?」
ゴラァ!! カーテス、でかい体で全裸行動してんじゃねぇ! パンツを履け! ってか服を着ろ!
「全部洗濯してもらったから、着るものがないんだよ」
どうして溜め込んで一気に出すのかな君は! キサナたちがリネン室でぼやいてたぞ! カーテス様はズボラだって。
「そ、そんなことは。いや、あるかもしれん。今後気をつけよう」
そうしてくれ。そして服が乾くまで部屋にいてくれ。全裸でウロウロするな。目の毒だ。
「お? 私の体に欲情してしまうからか? いいぞいいぞ。聖者が堕落して私と同じ様になったらどうなるのか見てみたいからな。肉欲と性癖を満たす行為をするか? んー?」
しねぇよバカ。お前とは体のサイズが合わねぇし!
「相変わらずムッツリスケベだな。ほら、お前の好きなぼいんぼいんばいんばいんだぞ~?」
いいから部屋にもどれ! ハウス!
「はいはい。また食事の時にな」
おう。大人しくしといてくれよ。
「せせせせせせせ聖者様!!」
うあ、びっくりした。なんですかシュテリアさん。ターンテーブルが壊れたDJプレイみたいな声出して。
「いいいい、いい、いまのは、まさか、百年前に聖者様が討伐したという、伝説の魔人、カーテスでは!?」
うん。討伐というか調伏というか。まぁ、もう悪いことはしてないから。あ、なんだったら他の魔人とも会います?
「い、い、いえ、それは結構です! せ、せ、聖者様は不還の森の獣王や魔人を従えておられるのですね。さすが神の使徒……。正直、驚きました」
従えてると言うか友達付き合いというか、まぁ、平和にやってるよ。
そういえばシュテリアさんちのハーバルド侯爵家って、元々はエンベローム子爵家の分家だったよね?
「はい、ご存知とは驚きです。失礼ながら、俗世のことに頓着されない方だとばかり……」
懐かしいなぁ、ギルドのサブマスターだったマドロードさん。
彼女が実家の不正を暴いて取り潰しになって、新たに興されたのがハーバルド家だったんだよね。
「聖者様は祖母をご存知だったのですか!?」
知ってる知ってる。いろいろ知ってる。だけど孫に言うべき話じゃないから知ってることは言わないよ。
「えー、是非お聞きしたいのですが」
長生きするとね、俺より先にみんな死んでいくんだ。だけど人との縁は続いていく。それが面白くってね。シュテリアさんを見ているとあの頃のマドロードさんの面影が見え隠れして、それだけでも満たされた気持ちになるよ。
「あの、祖母はまだ生きてますが」
そうだった。ハーフエルフだけど長寿なんだよね。
「そう言えば伝説の
そうね。あったね。濃い関係があったね。なんだかんだとあいつらとは長い付き合いだったし。
「お二人は戦女神ミランダ様と大魔術師メロウラ様を巡って四角関係だったという伝説は本当でしょうか」
は? そんなことあったっけ? むしろダッカスは―――。
「御館様、ご報告に上がりました。いつも通り警備に抜かりはありません」
お、噂をすればミランダ。いつもありがとう。
「え……いまのは戦女神ミランダ様……の娘さんですか?」
いや、本人。
「いやいや、若すぎるのでは……」
まぁ、俺の眷属になってから歳食ってないからね。いろいろ不便な生活をしていると思うけどよくやってくれているよ。
「聖者様の眷属になると不老不死になれるというのは本当だったのですか。聖者街で人が待機し続けるはずです」
「セツハぁ、おは~」
おいメロウラ。お客さんの前ではしたない。顔を洗ってきなさい、まったくもう。
「え? 今のが大魔術師メロウラ様ですか? 私より若くないですか?」
うん。彼女もなんだかんだあって、こうなった。
「あの、聖者様の眷属になるにはどうしたらいいのでしょうか」
うおぃ! シュテリアさんダメだよ、興味持っちゃダメ。
いやいや、ヴァンパイアにはなれないよ。ってか、ならせないよ? あいつらはほんとにイレギュラーでそうなっちゃったんだから! ヴァンパイアになるってのは、ほんとに辛いことなんだからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます