閑話 インタビュー 3
シュテリアさん、うちの夕食どうだった?
メイドのキサナもレパートリーが増えてね。最初に出会った百年前は肉を焼くだけって感じだったけど、今じゃこんな繊細な味付けもできるようになったんだ。
お風呂はどうだった? 露天風呂最高でしょ!
シャンプーもどきとリンスもどきとトリートメントもどきとヘアパックもどきで、シュテリアさんの髪の毛はサラサラ! キサナにアカスリしてもらって乳液もたっぷり塗り込んで肌もトゥルントゥルン! 風呂上がりのフルーツ牛乳も美味しかったでしょ?
いやぁ、神の力に頼らずここまで再現できたのはちょっとした自慢なんだよね!
「あの、聖者様。どうして私がアカスリしてもらったことや果実入りの牛乳を飲んだとご存知なのでしょうか……」
違うよ? 千里眼とか使ってナイカラネ。ちょ、待って! そのお守りを引っ込めて! 俺の目が潰れちゃうから! ほらほら、インタビューは明日にして、ゲストルームでゆっくり休んで! はい、おやすみなさーい!
…
……
………
キサナ、報告を頼む。
「はい。シュテリアさんに不審な行動はありませんでした。当家の調度品やカトラリーを持ち帰るような素振りもありませんし、何かを調べているようでもありませんでした」
彼女と一緒に来ていた連中はどうしてる?
「そちらは四人です。全員、聖者街の宿に泊まっています」
うんうん、なるほど。
……で、うちの周りって「聖者街」なんて名前付いてるの? 初耳なんだけど。
「外にいるのは、御館様のお力をお貸りしようとすがる者たちや、眷属になって永久の命を授かりたいと願う者たちばかりでして。つまりは聖者様目当ての者しか集まらない街なので、自然とそういう名前がついたのかと。当家の周辺に勝手に街が出来始めた時に止めるべきでしたね」
うちから少しだけ離れたところを開拓して街にしていたから、許していたわけだし、中には大病を患っていたり大怪我した子供を連れてくる人もいるので、あまり無碍には出来ないんだよなぁ。聖者的に。
「あの街の全員を御館様の眷属にしてしまえば早いのですが」
それはないなー。
うちの使用人たちは止むに止まれず眷属化した子が多いけど、よくわからん人を眷属にしたくない。ヴァンパイアは増やさずにこの館にいるのが一番だ。
「はい。御館様の眷属に取り立てていただき、銀人狼種に進化いたしました私としましては、永遠に御館様にお仕えすることで……」
あーあー、そういうのはいいから自分の人生は自分で楽しんで! 無理して俺に仕えなくてもいいからね?
「お仕えさせてください。それが私の幸福なのですから」
眷属化するとこういう依存傾向が強くなるからイヤなんだよなぁ。それに眷属化するとなにかのゲームみたいに自己進化して別の種族になっちゃうのも怖い。眷属を増やせば増やすほどこの世界の生態系をぶち壊しそうだし。
「御館様、取材の申込みをしてきたウィークリーキングダム社についても調査を進めていますが、もしも会社ぐるみで御館様に対して害意があるようでしたら、使用人一同喜んで潰して参りますがいかが致しましょう?」
まぁまぁ、そう焦りなさんな。
なにをするにしても俺の指示を仰いでくれたら良いよ。独断で行動しないように。
それと念のためにシュテリアさんの監視も続けてね。この世で一番狡猾でずる賢いのはヒュム種なんだから。
「さすが御館様です。打ち解けているようでしっかり監視なされていたのですね。女湯まで」
キサナ、ちょっとまってくれたまえ。おおおお女湯とかなんのことだか……。
「御館様の千里眼、暗視に透視。それらの御力があれば当家の女湯を覗き見ることなど造作も無いことかと。それこそあられもない姿でアカスリしているところから、風呂上がりの脱衣所でフルーツ牛乳を飲むところまで、バッチリと」
キサナちゃん、いつもの子犬みたいにじゃれついてくる目じゃなくなってるよ? いまのそれ、狼が敵を食い殺す寸前みたいな目付きだからね? そういう目で雇い主を見るのは良くないと思いまーす。
ほんと、すいませんでした。
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