転生魔法生物が世界を救うまで、あと

カイザー

序章

世界を救うまで、あと000



 宇宙空間の中、二人の少年が対峙する。


 漂う小惑星──月によく似た地肌にて、互いに睨み合う。

 星々に囲まれた背景のなかに、十字の大陸を描く美しい惑星ほし地球ほしが、二人の視界の端に大きく映り込んだ。


 ここには酸素もなければ重力もない。

 しかし、二人は生身でありながら平然と立つ。自然の摂理から逸脱いつだつした所業しょぎょうであった。


「──ヴァルヴァレットぉぉおおお!!」


 金色こんじきの髪を震わせて、一人の少年が拳を握りしめて雄叫びをあげた。

 片足を叩きつけ、地面が割れる。隙間から爆炎が燃え上がり、彼の全身を包み込んだ。


 宇宙空間で爆発など理に反する現象だが、今の彼にはそれを捻じ曲げる"力"があった。

 さながら阿修羅の如く。気迫に満ちた双眸が、もう一人の少年を捉える。


 開幕早々、全力全開──相手にとって、不足はない。


「”森羅万象マルクト”──『回帰無限光アイン・ソフ・オウル』」


 相対する少年も、片腕を掲げて唱えた。

 黒髪が白銀色の発光を帯び、白、灰、青、黄、緑、橙、それぞれの色合いをした六枚翼が背中から生える。


 神々しい輝きを全身にまとい、準備は万全──


「うぉぉぉおおお!!」


「はぁぁぁあああ!!」


 片や赤くたぎる流星。片や虹にきらめく彗星。太陽光のように互いが突進し、直線を描いてぶつかり合う。

 己のすべてを賭けた決闘。それが宇宙全土を揺るがすほどの衝撃を生み、光がすべてを包み込んだ。




 これは、世界と異世界──それぞれの少年が両世界を救う、神話を描いた物語エピソード

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