第51話 世界探知(ルドティナ)
イリスの行き先を掴もうとするが、彼女のレジストによりなかなか難しい。
そんなとき、フレアとシンカが何やら手助けをしてくれると言う。
彼女2人の雰囲気が変わった。
魔力が跳ね上がっていく。
「……燃え上がれ! レーヴァテイン!」
フレアの髪が炎のように燃え上がる。
「……澄みわたれ! アマリリス!」
シンカの髪が霧状になり、広がっていく。
彼女たちがそれぞれ得意とする、戦闘能力を一時的に向上させる魔法技術だな。
入学試験時の諍いでも使っていた。
少し懐かしい。
「ディノス。あなたはイリスさんを追いかけたいんでしょ。だったら、私たちが探してあげるわ。ねえ? シンカ」
「そうだね。僕とフレアが力を合わせれば、ワンランク上の探知魔法を発動できるはず……」
「ほう」
彼女たちは、少し前まではお互いを激しくライバル視していた。
力を合わせるなどとても考えられる状態ではなかったのだが……。
余の前でともに一夜を明かして、仲が深まったようだな。
感覚同期(クロティア)の影響も大きいだろう。
「お前たちの心意気を買おう。今のお前たちの力を見せてみよ」
余は探知魔法も得意としている。
だが、つい先ほどイリスの魔眼を正面から抑えつけたため、若干の消耗をしている。
その上、イリスが余の魔眼の波長を記憶してこちらからの探知を妨害しているようだ。
魔王である余が腰を据えて取り組めばいずれ破ることもできるが、少し厄介だ。
ここはフレアとシンカに頼らせてもらうことにしよう。
妻であり配下でもある彼女たちの力を余が借りることに、何の不自然もない。
「言われなくてもそのつもりよ」
「行くよ、フレア」
「ええ、シンカ」
フレアとシンカが手を繋ぎ、同時に詠唱を始める。
「「我は求める。燃え盛る炎の精霊よ。澄み渡る水の精霊よ。集いて我が力となれ。世界探知(ルドティナ)」」
二人の探知魔法の光が、空へと向かって放たれる。
先ほども言ったが、今の余の魔眼ではイリスの居場所を探ることは難しい。
しかし、彼女らの実力ならば今の余より広い範囲の探知が可能だろう。
……そして、少しの時間が経過した。
「……見つけたわ。ここから北西へ500キロほど行ったところよ」
「移動はしていない。ここで休憩しているのか、ここが目的地だったのか……」
フレアとシンカから報告を受ける。
かなり離れた場所だな。
この短時間でそこまで移動するとは、さすがはイリスだ。
「助かる。礼を言うぞ、フレア、シンカ」
余は飛翔の呪文を唱え、宙に浮く。
本来は転移魔法での移動も可能だが、イリスにより妨害されている気配を感じる。
ここは飛んでいくのが確実だ。
それに、余の魔力ならたかが500キロ程度はさほどの距離ではない。
「まったく……。ディノスは仕方のない男ね。しっかり、イリスさんも幸せにしてあげなさい」
フレアがそう言って微笑む。
「ディノス君。君の愛で僕は幸せを知った。イリスさんの気持ちにも応えてあげるんだよ」
シンカもそう言う。
「ああ。余を信じて待っているがいい」
余は短くそう答え、イリスのいる場所に向けて飛び立ったのだった。
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