第4話 別れの言葉
俺とシェーラ・サウナット、そして、警戒はしているものの手伝ってくれた修道院長の女性と共に、気を失っていたり、狂いかけている女性達を、奴隷商の劇場テント裏にあった、血が見えない綺麗なシーツの上に寝かせる。どうやら来客用の場所のようだ。全員を移した時には太陽はもう登り切っていた。俺は、簡単に女性達の容態を見終わったシェーラ・サウナットと修道院長に話しかけた。
「ここの情報は騎士団にも伝えてある。もうすぐにでも騎士達がやってくるだろう」
「行ってしまうのですか?」
俺が言おうとしていた事を、シェーラ・サウナットが割り込むように言った。
「あぁ。わかっているだろうが、俺は人斬りだ。善行悪行を考えて斬ってきた訳じゃない。騎士に捕まれば犯罪奴隷を通り越して死刑だろう。だから、騎士達が来る前にここを去る」
「そうかい。まぁ私達は、
修道院長はそう言って微笑んだ。どうやら俺の事は見なかった事にするようだ。しっかりと顔を見られたのは修道院長とシェーラ・サウナットのみ。この二人が何も言わなければ、俺が炙り出される可能性は限りなく減る。それに、きっと二人共、俺の事は記憶は残らない……。
「えぇ、そうですね。私達は何も見ていません。ですが、絶対に貴方の事は忘れません、ルッシュ様。助けていただいて、本当にありがとうございました」
俺の思考を呼んだように、シェーラ・サウナットはそんな事を言い頭を深く下げた。……遠くから金属のこすれる音、騎士達が近づいてきている音が聞こえた。
「どうやら騎士達が来たみたいだ。えっと、もう会うことは無いだろうから、覚えていなくとも良いが……まぁ、これでさよならだ。……皆が、これから幸せである事を」
俺は最後、昔母が言っていた言葉を呟いてこの場から去り、袋に包んだ男爵の頭と、同じく袋に包んだ見張りの男を持って、奴隷商の劇場テントから離れた。
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