君を救う為の物語

kernel_yu

第1話

余命一年と宣告された。私はもう長くない。

残された時間で何ができるのだろうか。それを考えた時、私の頭の中に一人の少年の顔が浮かんだのだ。

その少年のことは以前から知っていた。

彼は私と同じ病に侵されている。彼もまた余命いくばくもない。

私が彼に接触したのは偶然だった。彼が入院している病院をたまたま訪れた時に彼と会った。その時の会話はごく短いものだったと思う。だがそれで十分だと思った。彼の表情を見て確信したからだ。彼は私と同じように絶望していた。そして何かを求めていた。それは生きる目的や目標と言ってもいいだろう。

だから私は自分の病状を話した。もし君もそうならば私の話を聞いてほしいと思ったから。

しかし、予想外なことが起きた。

「俺には家族がいない」

彼はそういったのだ。

私は驚いた。てっきり両親がいると思っていたから。

「両親は小さい頃に死んだらしい……その後親戚に引き取られたが俺は馴染めなかった……」

私にも似たような経験があった。だから気持ちはよく分かった。

「それからずっと一人で生きてきた。友達なんて一人もいないし恋人だって一度もできたことがない」

でも今は違うはずだ。

「確かに今は生きている……。だけどそれもいつまで続くのか分からない……」

彼は私を見る。その瞳はとても悲しげで今にも泣き出しそうな感じだった。

「だからアンタの話を聞くことはできないよ」

私は悔しかった。

だから決めた。彼を救おうと。

その為に必要なものはたった一つしかない。

『奇跡』である。

これは神様がくれなかった最後のチャンスかもしれない。

『神の力』ではないけれど、これを使えば彼に延命治療を施すことができるはずだ。

さぁ、始めよう。

―――君を救う為の物語を……。

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