環境美化週間です。

「ちちうえ~!!」


今日も今日とてアテナがすっ飛んできた。


「スティンファロスにへんなとりがだいはんしょくして、たみぐさがなんぎしているようです!!」


 最近はだいぶ語彙が増えて『難儀なんぎ』なんて難しそうな言葉も使うようになった。でも相変わらずしゃべるのはひらがな。読み辛いことおびただしいだろう。

 いいかげん読者様の便宜をおもんばかって漢字でしゃべるようにしてはどうだろうか。


「アテナのしゃべりかたはどうでもよろしいのです!!それよりへんなとりです。でかいくちばしとつめでがっつんがっつんかちくやひとをつつくのであぶなくてたまらんらしいのです!!」


 ああ、群れる種類の害鳥が大繁殖するとタチ悪いよな。いくら追っ払ってもすぐ戻ってくるし。まぁ、国王通して討伐依頼出しとくからそのうちなんとかなるだろう。


「むぅ……あてなはしんぱいです」


 大丈夫大丈夫、そのくらいへーきへーき。


「またごじつようすをみにまいります」


 そうしてやってくれ。


 そして数日後。


「ちちうえ~!!スティンファロスにいってみたら、このあいだのちょうかわいいあかちゃんがぼうふりまわしてとりとたたかってました!!」


 この間の超かわいい赤ちゃん?


「たしかへらくろ……?」


 それポケ〇ン。著作権法に触れるから最後まで言っちゃダメ絶対。


「あ、そうだへらくれすでした。へびぶんまわしてたちょうかわいいあかちゃん」


 ……ああ、ヘラの刺客の蛇ひっつかんでぶん回して引きちぎってきゃっきゃ言ってたなあ。


「あんなにちっちゃくてかわいかったあかちゃんがもうあんなごついおっさんになってるなんて、つきひがたつのははやいものですね」


 ……たしかに今のヘラクレスはごついオッサンだが。というかお前いくら神でも変わらなすぎだろ。せめて話すときにちょっとは漢字混ぜろ。


 ……で、ヘラクレスがどうした?


「こんぼうふりまわしてとりをおっぱらってるんですが、へらくれすがいなくなるとすぐもどってきてしまうのです」


 ……まるでカラスだな。


「なんとかなりませんか?」


 ヘパイストスにでも相談したら?


「そうだ!!あにうえならなにかはつめいしてくれますね!!あにうえ~~~!!!」


 アテナはヘパイストスの工房にすさまじい勢いですっとんで行った。


 そして数日後。


じゃ~んじゃ~んじゃ~ん

がら~んがら~んがら~ん

しゃんしゃかしゃんしゃかしゃんしゃか


 なんだなんだ??

 天上界にまでくっそやかましい音が鳴り響いてくるぞ。思わずのぞき込むと、スティンファロスでアテナがでっかい鐘とシンバルと鈴をぶんまわしてすさまじい音を立てていた。


 あまりのクソやかましさに鳥たちもびっくりして一斉に飛び立つ。そこをヘラクレスが次々と矢で射抜いて、ついには1羽残らず鳥を退治することができた。


「うわなんだこのとり、くちばしとはねがせいどうでできてる!!」


 おや?青銅の羽根と嘴を持つ鳥だと??


「どくのうんこをはたけにおとしてさくもつがそだたなくなるし、はねでひとやかちくをつつきまくるからみんなめいわくしてたようです!たいじできてよかったです!!」


 ……これアレスのペットじゃないか。全部退治しちまって大丈夫かな……


「なんと!!ぺっとのはなしがいはいけません!!かいぬしはあれすどのというのですね!!ちょっとちゅういしてきます!!!」


 ちょ、待て。アレスは言って聞くような奴じゃないぞ。

 引き留めようとするワシの声はまったく届かなかったようで、アテナはどこかにすっ飛んで行ってしまった。


 彼女が目的の「アレス」の事をどこにいるどんな奴か全く知らないと言う事実に気付いて戻ってきたのはその5分後だった。脳筋ここに極まれり。……こいつ本当に叡智と戦略の神なのか……??


 ワシはまた割れるような頭痛を感じて眩暈がしたが、さすがにもう頭カチ割ってみようとは思わなかった。

いくら可愛くてもこんなん2人もいらん......

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る