抵抗回帰 〜君に告白するために死んでくる〜
菟月 衒輝
第1話 死んだんだが。
――今日、好きな子に告白する。そう決めた。
ゆいは十年来の幼馴染。彼女に告白すると。
オレが持ってる中で最高におしゃれな服に着替えてから鏡を見た。
寝癖なし。シャツに皺なし。鼻毛も出てない。念の為ミント味のガムを口に放り込んで家を出た。
扉の向こうは叫びたいほど青い空が広がって――。
速い鼓動と溢れ出す高揚感に背中押され――。
待ち合わせの時間まで、三十分以上もあるけど、早いに越したことはない!
走ることはない。走れば汗もかくし髪も乱れる。
だから急げば渡れそうな目の前の青信号も、今日は渡らずに赤を待つのだ。
余裕を保たなきゃならん。なんてったってこれから一世一代の大勝負をするのだから。
恋愛は心理戦だ。女心と秋の空なんて言うように、心に余裕がなければ、気まぐれに振り回され、弄ばれるのがオチ。
そうだ落ち着いて挑むんだ。勝率は九割だと思う。残りの一割、それはタイミング。
ムード。時間。場所。その三重点を突け――!
青になった。一歩踏み出して――――オレは
「「危ない!!」」
幼稚園児くらいの子供が車道に飛び出している!
車道というからには車が走っているのだ。
オレはノータイムで飛び出した。
足の速さには自信がある。昔から運動神経はいいほうだ。
オレは両腕で子供を抱き上げ、身体を切り返す。
クラクション――!
あ、これ知ってる。タキサイキア現象というやつだ。
命の危機を感じると、世界がスローモーションになるあれだ。
だからといって、オレの身体の速さは変わらんのだ。
抱えた子供を歩道に投げ出す――。
痛みは一瞬だった。
鈍い音と悲鳴が聞こえた気がするが、猛烈な痛撃に押し出されるようにオレの世界は刹那に闇へと閉じた。
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