追悼34 腐った林檎は、喰えない。
影狼の法廷の初陣は、予想されていた通り、実際の法廷ではあってはならない憶測の範疇での導きだった。その無責任さと罪悪感は、参加していたメンバーが一度は乗り越えなければならない悪魔の選択だった。
財 津「蜷川さん、大丈夫ですか。過去を否定するような結論で」
蜷 川「そうですねぇ。悔やんで変化しないのなら、自己否定することになっても一
歩でも前に進みますよ。その選択が間違っているなら閻魔大王の裁きを真摯
に受けなければなりませんねぇ」
三 上「人が人を、人が作った法で裁く。未完全のね。その法の番人・要とも言える
判事が忙しさに押しつぶされ、事務処理として関係性に疑問をも呈さず執行
する悲しい現実がないとも言えない現状に一石を投じる意味で私たちの行動
は良くも悪くも必要だと思っているわ」
神宮寺「僕も同意。法は現実に追いつけない。追い越せば強酸主義や密告社会を作り
出すだけだよ。僕たちが動いても世の中は何も変わらないかも知れない。そ
れでいいんだ。忘れられた被害者とその関係者が溜飲が下がれば。今はそう
思っているよ」
財 津「今はってことは、前は世直しか仕掛人にみたいに思っていたのかな」
神宮寺「五月蝿いなぁ、その口、シャットダウンさせるよ」
財 津「お~恐い、お口にチャックね。了解」
神宮寺「わかれば、宜しい」
綾小路「で、具体的にどうされますか」
三 上「まずは、主犯格の中野美帆と城井優斗を拉致することね」
綾小路「それで裁判にかける」
神宮寺「そうだね」
財 津「判決は決まっているのに」
綾小路「異議申し立て、反論の余地は残すべきでしょう」
財 津「流石、元裁判官」
神宮寺「もし、被告人の反省の色が濃かったり、後悔の念を表したら」
綾小路「その時は、執行猶予を与えるべきかと」
三 上「無駄よ、そんなの。腐った林檎は周りをも腐らせるわ」
財 津「金八先生に説教されるよ、理沙」
三 上「したければすればいい。言い合いになって喧嘩になれば、私がたたきのめす
から」
財 津「暴力はいけません、暴力は」
綾小路「まぁまぁまぁ、私たちの行いは、話し合いで型が就かないから暴力でと、紙
一重なのですから。正当化するような身勝手さはありません」
蜷 川「そうですね、褒められた行いではありませんよね。だから、慎重に」
神宮寺「ねぇねぇ。ふたりだけを裁いても意味があるの?」
蜷 川「ないかも知れませんねぇ。でも、気にする者には効くと思いますよ。次は自
分かとね。それだけでも意味があると思いますよ」
綾小路「それもデータとして追う必要があると思います。その結果次第で考えましょ
う。机上の空論は得てして特異な結果を招くものですから」
財 津「行動あるのみ。失敗は成功の母。犠牲者としても適任でしょ」
三 上「何か楽しんでいない、そこの猿」
財 津「猿のはくせい、嗅いだことないけど」
神宮寺「猿の惑星のダジャレ。おじさん臭が酷いね」
蜷 川「消臭剤を用意しましょうか」
財 津「蜷川さんもそんなこと言うんだ、これは新発見」
綾小路「まぁまぁまぁ、どうも脱線が多いようで控えて頂ければ幸いです」
神宮寺「怒られている~」
財津は、神宮寺の左肩に右手を乗せ、頭を垂れた。
三 上「話を戻すわよ。中野美帆は中学卒業後、知り合いの紹介で美容院へ就職。オ
ーナーの将来は美容師にと学校を勧めるも本人は全く乗る気はなく、不貞腐
れた態度で不愛想な勤務態度。その鬱憤を晴らすように未成年であるにも関
わらずガールズバーで夜、働いているわ。オーナーも未成年であることを知
っていて働かせている。美帆は酒に弱く、酔いつぶれて常連客といい関係に
なることも多い。それを知っていてまた常連客が増える。オーナーにとって
いい客寄せパンダになっているのが現状ね」
財 津「美帆がいなくなったらその客たちが騒ぐんじゃないか」
三 上「オーナーは大事になれば、訴えられる可能性もあるのでうまくごまかすでし
ょう。だから、その心配はないわ。その噂は、美帆と関連があった仲間には
恐怖に匹敵するでしょうけどね」
神宮寺「僕たちの狙い通りだね」
財 津「なっ、言っただろ、責任者だって」
神宮寺「はいはい」
財 津「はいは、一回ね、神宮寺君」
神宮寺「は~い」
三 上「続けるわよ。城井優斗は高校に進学するも素行は相変わらず。しかし、騙し
やすい異性を嗅ぎ分ける能力に磨きがかかり、自分が楽しみ、飽きれば友達
や知人に売りつけて小遣い稼ぎをしているわ。彼に関わる初心な経験値の低
い女性の被害者増大ね。子供を身籠る犠牲者が既にでているかも」
神宮寺「腐った林檎は元には戻らない…か。金八先生、敗北」
綾小路「人間は容易く変われない、見本のようなものですね」
蜷 川「再犯を重ねる者たちに似てますねぇ」
財 津「じゃ、決まりと言うことで、いいかな」
メンバーの全員が「異議なし」と挙手し、実効へと進む。
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