大粛清 一 

大粛清だいしゅくせいの詳細

真神が日本に対して行った治療という名の浄化は苛烈なものだった。後に真神の大粛清と呼ばれる"それ"はある者にとっては待ちに待った喜ばしい大イベントであったが、そうでない者、特に犯罪者や悪意を持つ人々にとっては地獄と呼ぶのももどかしい苦痛そのものであった。


ここに大粛清の一部詳細を記す。大粛清レポートと呼ばれるものの抜粋である事を了承して頂きたい。


・国会、内閣


欲に塗れた政治家、汚職政治家、利権にしがみつく政治家は全て真神の粛清の対象になった。彼らは即刻罷免され真罰が下された。真罰の名は"虚偽きょぎの罰"。舌が2枚、もしくはそれ以上に割れ、嘘をつこうとすると強烈な激痛が舌から体全体に走り抜け喋る事が出来ない。


本当の事は痛みを感じず話すことが出来る。つまり真実しか口に出せなくなった。さらに体中に"欲"という文字が浮かび上がる罰、"強欲ごうよくの罰"を受けた。文字と痛感神経はリンクし、常に激痛が発せられている状態が続く。


医学的処置も無効であった。彼らは激痛から逃れるには文字を消すしかないと考え、文字をこすったり、上から色を付けたりしたが全く効果がなかった。


真神は悪徳政治家たちに告げた。

「痛文字を消去するには善行を積むしかありません。もしくは心からの懺悔。どちらでも構いません。ですがそれらが偽りのものであった時、文字はさらに濃さを増し、苦痛も倍増するでしょう」


多くの罪深き悪徳政治家たちは痛みに耐えきれず自殺しようとしたがどうしても出来なかった。真神による制御が働いているのは間違いない。彼らは今も罪の浄化に苛まれ苦しみ抜いている。


・裁判所


過去の判例にこだわり続け、根回しや駆け引きにのみ長ける裁判官は大粛清の対象になった。罷免ひめんされた裁判官の数は全体の過半数を超え司法の腐敗ぶりが改めて浮き彫りになった。そして罷免された裁判官の多くが過去に自分が下した理不尽な判決の報いを受ける事となった。


自分の親族が被害者となり加害者が何のとがめもなく無罪もしくは情状酌量じょうじょうしゃくりょうの判決を受ける場面を見させられる仮想体験を味わった。他に表現方法が見当たらない為、便宜上仮想と呼ぶしかないが現実としか思えないリアルな体験であった。あまりにリアルな為、脳が現実としか理解出来なかった。


この苦しみを何度も何度も繰り返させられる真罰は"誤裁ごさいの罰と呼ばれた"。中には己の妻や子が殺害される様を目の前で目撃、その後の裁判で加害者が無罪を勝ち取りほくそ笑む様子を繰り返さし体験させられる裁判官もいた。


かつて良識ある裁判官として奮闘するも司法界の現状に嫌気がさして辞めてしまった元裁判官たちに真神は直に再徴用のオファーを送った。ほとんどの者が真神のオファーを快く受け入れ再び裁判所で働く事となる。裁判官を裁く弾劾裁判については、真神連しんじんれん幹部が受け持つ事となった。(真神連については後述)


・警察

縦社会の典型である警察組織にも容赦なくメスは入れられた。警視総監以下多くの警察幹部が真罰の対象になった。汚職や利権、天下りという欲に絡めとられた者たちは真罰の恐ろしさにおののいた。真罰名"正義の罰"。

わずかに残っていた良心が極肥大化し、24時間犯した罪の意識に苛まれる。他の事は一切考えられなかった。


組織の改善として増えすぎた人員は減少され、部課の統合が図られた。一般から適性のある者たちが真神の選択により選ばれ警察官になった。その数は全体の3割にのぼる。


現場で働く警察官や刑事の給与は260%アップした。逆に高い役職や地位にある者の給与は減額された。キャリア、ノンキャリア主義は腐敗の温床とされ排除。学歴主義はなくなった。かといって実力主義一辺倒でもない。


上手くバランスが取られたものになる。そして警察官に最も求められるもの、それは正義の心と人格者である事だった。


・自衛隊


自衛隊の一部幕僚長や幹部も粛清の対象にされたがその数自体は多くはなかった。自衛隊に対する真神の評価は高く、唯一真神の直属の組織として新たに再編成され名称も"真衛隊"に変更された。

真衛隊の最高責任者は内閣総理大臣から真神へとシフトされた。もしくは真神連の最高執行責任者が兼任した。真衛隊が所持している重火器、攻撃兵器は一部のみ携帯、使用が許可された。


・公務員


部署により仕事の量が異なる状態を是正し、国民に奉仕する精神を持つよう真神連による再教育がなされた。給与レベルは民間並みに落ち着いた。人員整理も行われ過剰な人員を抱える部署は統廃合された。公僕の意識の低い職員は即刻解雇された。

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