『お払い箱』

やましん(テンパー)

『お払い箱』 上

   『これは、フィクションです。』




 『お払い箱』は、正歴2205年に定められたもので、従業員50人を越え、または、資本金が5000万ドリムを越える事業所、さらに、公共機関は、正規職員の人事権がある事務所、また、その代表的事務所において、設置が義務づけられた、設備であります。


 また、各市役所や、その支所にも設置され、それ以外の事業所は、そちらを使用します。


 文字通りの、一辺が3メートルの箱です。


 一応、蓋があり、開けるには、認可番号を入力し、さらに、個人認証を必要とします。


 電源は、一般の電源コンセントから、とれます。


 人事権者が、相当と認めた場合で、職員を代表する組合、組合がない場合は、職員の代表と認められるものの合意により、その雇用するものを、『お払い箱』に放入できる、と、されます。


 いわゆる、アルバイトなどの、非正規職員さんなどは、対象になっていませんでした。


 『お払い箱』に投げ入れられると、すっぱり、消滅します。


 『業務都合殉死』と、見なされることになります。


 だから、遺族には、政府から一定の、一時金と、遺族年金が支給されます。


 ただし、それは、普段、公共保険として積み立てられています。


 財源は、本人、事業所、国の、三分割です。


 もし、反逆すると、家族全員が放入対象になります。


 

   ・・・・・・・・・・・


 もちろん、こうした制度に、反対の人が、いないわけではありません。


 どこで、どうなったのか、わからないうちに誕生した、『安全自主党』による、集団独裁制度により、いつのまにやら、始まったのでした。


 折しも、それは、火山の超巨大噴火による、世界的大飢饉、大騒乱の中でした。


 当時、国民の、三分の一が、餓死したと言われます。


 だから、食べるお口を、減らす必要がありました。



 でも、国会議員の、パンダ・マク・タロウさんは、それでも、これは、悪法であり、許せないとして、廃止を訴えてきたのです。


 しかしながら、パンダさんは、小さな政党に所属していて、巨大与党には、まったく、歯が立ちません。


 パンダさんの、事務所や自宅には、嫌がらせの電話やメールが、たくさん来ておりました。


 国民の多数は、なお、やむを得ず、と、考えていました。


 

 …………………………………


 しかし、パンダさんは、この、仕組みは、非常に怪しいと睨んでいたのです。


 『お払い箱』の仕組みは、秘密でした。


 箱は、非常に頑丈に、作られていて、専門業者でないと、分解は不可能でした。


 もし、定期点検で、分解しようとしたらしき痕跡があると、その現場の全員が、『お払い箱』になります。


 ビデオ撮影もされています。


 だから、なかなか、手がつけられないのですが、パンダさんは、『お払い箱』の、真の目的は、他にあるのではないか、と、疑っていました。


 ……………………………………

 


 


 

 


 


 


 

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