無題①(描写練習)
雲間に夕日の色が閉じ込められて、灰色がうっすらと街を包んでて、瞬いた街頭だけが場違いに明るい。
灰色の川面が斜陽を捉えて、揺れる合間に薄桃色が閃いている。頼りない細さの欄干の向こう、鈍色に輝く川を跨いだその先に、黄昏の夕闇に霞むビルの影。広い広い川幅に遠く隔てられた街並みは、その輪郭が曖昧で、ふと息をしたら立ち所に形を失って、空か川に溶けて流れてしまうんじゃないかと思えるくらい。
いわし雲から、朧気に染み込む太陽の残滓は光量不足で、逢魔時の街路は、ひたひたと夜の気配に飲まれてく。足元はもう、暗闇に浸ってる。
彼岸と此岸を渡す斜張橋を吊るワイヤーのシルエットは少し不気味で、暗く翳る向こう岸を一層異様に引き立てた。
欄干も街灯もワイヤーも、何もかも無機質に直立して、暗がりに線となって佇んで。こちら側さえ非現実的で、遠くに見えるものは何もかも細く小さくて、世界はくすんだ灰色のフィルターを透かした様な色をしていて、何もかも、今にも経ち消えそうな霧のよう。
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