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夜が明けて、月は無言で彼女を連れ帰っていた。
朝起きた時、ベッドに彼女がいないことをただ呆然と知り、何かに取り憑かれたかのようにリビングに向かっていた。
薄くなった部屋の空気を裂いて歩いた先にテーブルがあり、その上には手紙が置かれていた。
冬の枝のような冷たい手でなんとか掴み、ソファーに体を落とすと、彼はゆっくりと無意識のまま手紙を開いた。
嘘を剥がした感情のままに、波打ちながら蛇行した彼女の文字は「今までありがとう。元気でね」と記され紙は涙で縒れていた。
彼は無表情のまま、また涙が流れていた。
陽が上がり、カーテンの隙間から光が差し込んで、彼の前に柱を作る。
涙が垂れ落ちる彼の目にはしっかりと色が見えて、それは黄色だった。
彼女の黄色ではなく、鮮やかなまでに彼の黄色だった。
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