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バラエティ番組の笑い声に混じって、横から何かが聞こえた。
あっさりと明るく流れたその音は幸運の女神のように通り過ぎたため、彼は正確に聞くことができなかった。
「今なんて言った?」
「私たち別れましょ」
今度の声ははっきりと聞こえた。と同時に彼は脳みそが石にでも変えられたみたいに、何もかもがわからなくなった。
「どうして、いきなりそんなこと言い出すんだ。昨日のことなら今朝も言ったことだけど、あいつの言ったことはただの一般論でしかないじゃないか。僕はずっとそれた道を生きてきたんだ。今度だって何も変わらない」
彼はなるべく冷静装って冗談をあしらうように、少し笑みさえ浮かべながら答えた。
しかし、心臓は肋骨を折って弾き出さんばかりに強く打っている。
彼女は口元に手を当てて揶揄うように楽しそうに笑っていた。
「それはバーで人の歌をまともに聞かずにやけ酒してた頃だよ?今は違う」
「そんなことはない。私は…」
「真二はやっぱり社長だよ。ただの人なんかじゃない」
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