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自動ドアが開きエントランスに入ると、少し早すぎる夕焼けとの再会を果たした。
真っ赤な絨毯が床一面に敷き詰められ、木製の受付台は経年によるものなのか、ニスによる着色なのかは分からないが、樽底に沈澱した色を掬ってきたように深く重い赤が染み込んでいた。
私は靴をロッカーに入れると、夕焼けに包まれながら受付に向かった。
受付には美しい姿勢で若い二十代の女性が二人座っていた。二人の出立ちは雛飾りの二人を盗んで並べたかのように奥ゆかしかく整然としていた。
私が彼女たちに近づいていくと立ち上がり、受付台に着いた時には会釈をした。
二人とも髪の長さを肩に当たる程度に揃え、濃紺のスーツは近くに来なければ、黒と見間違うほどだ。胸ポケットについたバッジが鈍く金色に光り、この旅館の威厳を示していた。
私はそのうちの一人に名前を伝えた。彼女がパソコンで確認をする間、もう一人の女性は座り、またノートパソコンで自分の仕事に戻った。
すぐに私の名前は見つかったようで、彼女は後ろの木の棚の中からルームキーを取り出し、私に手渡した。
私が受け取ると
「右手の奥にエレベーターがございますのでお使いください」
と微笑む。
私は感謝を伝える。
すると座っていた受付も立ち上がり、二人揃ってもう一度私に会釈をした。
もてなされるという体験に慣れず、私は少し戸惑ったが、一回左手をを上げてからその場から立ち去った。
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