第5話


 儀式から3ヶ月経ち、弟の適正の儀があった夜、レオンはゲルトの執務室に呼び出されていた。


儀式から3ヶ月経ち、弟の適正の儀があった夜、レオンはゲルトの執務室に呼び出されていた。


「自分が呼び出された理由はわかるな?」


 どこまでも冷たい眼差しでレオンを見下しながらゲルトは問う。


「私の処遇が決まったのでしょう? 廃嫡は確定として、平民に降格、適当な貴族家に婿養子、と言ったところでしょうか? どんな処分でも良いですよ」


 若干、皮肉気に返事をするレオン。しかし、ゲルトは、


「処分などではないさ。ただ、シルフィード伯爵家を継ぐのは、ヴィントの方がふさわしいことがわかったので、お前には悪いが、家督相続権を放棄してもらう」

「ええ、わかっていますよ。商人よりも騎士王の方が伯爵家にふさわしい」

「しかし、ただ、放棄させるのも悪いから、お前には代わりに男爵位と領地を与える」

「ッ!?」


 想定外の言葉にレオンは困惑する。父が自分に何かを与えるには勿論のこと、平民として、追放することもない、など考えられなかったのだ。例え、普通は子爵位を与えるのが相場であるとしてもだ。しかし、次の言葉で納得する。


「領地は、タスフェルドだ」

「……」


 レオンは、苦虫を噛み潰したような顔をした。

 タスフェルドとは、約100年前に毒の邪神によって、滅ぼされた国と山脈を隔てた隣に位置しており、山脈には、邪神の影響なのか、強い魔物が多数棲みついており、生きていくことも困難の土地である。さらには、その山脈以外にも他の山脈が存在しており、東以外は山脈で囲まれている天然の監獄のようになっている。そのため、人は住んでいないはずである。そんな、地にレオンを送る理由はーー


(長男が無能だった。と言うことを隠したいのか? そんなことしても、タスフェルドに送っている時点でわかるだろうに)


「わかったら、とっとと荷物をまとめろ。出発は明日だ」

「……わかりました」


 レオンは、そう言うやいなや、執務室から出て行く。

 一刻も早く一人になりたい気分であった。

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