第64話 ほぼ無視された第三層ボス

「あんた。ほんとにボス部屋を知ってるんでしょうね?」

「知らないけど? オーラが見えるから、そこに向かってるだけっすよ?」

「ふ~ん……」


 無関心に反応するチェリス。マグマに落ちて数分経っても、終わらない煉獄地帯。

 一方向に伸びる黒いオーラを、俺達はひたすら追いかける。ほんと、どこまで長いんだよ……。

 やれやれと思いつつ、見えてきたのは、マグマに囲まれたバトルフィールド。


「第6層と同じパターンなんかな? それなら、6層の方が安全じゃね?」


 違いとしては、水かマグマかのことで、構造は同じ。やっぱりマグマはマグマで、サメはいない。


「この層のボスは、サンショウウオだったと思うわ……。炎の遠距離攻撃が厄介なのよね……」

「なるほど。なら氷属性で……、ってアルスいないから、無理じゃん‼」

「人頼みしないで、自分でどうにかすることだけを考えなさい‼」


 どど、どうにかするって……。どうすれば……。チェリスの発言に混乱する俺。答えを出せぬまま……。


「もういいわ……。アタシが魔法でフォローするから……」


 好感度が下がった……。だって、属性変更できないじゃん‼ 風魔や雷夜、アルスがいたからできたんだよ?


「なによ。自分で思考力がどうとか言っておいて……。活用法くらい増やせないの?」


 た、たしかに言ってたわ……。実際は、ルグアの発言を引用しただけだが……。忘れてた……。

 ならどうしよう……。マグマの中からひょっこり顔を出す、サンショウウオ。

 口を開けて、火炎砲の発射準備をしている……。受けたら黒焦げになりそうで怖い。


「アタシからアドバイス。単体で属性を反映させるなら、やりたいことを考える。想像力があれば、できるんじゃないかしら?」


 属性を考える? 氷を出したいから……。アルスと組んだ時の感覚を使えば……。

 愛剣の属性を炎から氷に……。冷たい柄を考えて、意思だけで無理やり変更。時間はかかったが成功させて、フィールド全体を凍てつかせる。


「やるわね……」


 それほどでも……。問題はこの状態を維持できるか……。俺が苦手な部分だ。集中力がすぐ切れる。


「なら、一発で仕留めたら?」

「了解‼」


 属性強化を発動させて、片目だけ水色に。少しだけ自覚していたが、集中力が試される。


「説明してないで刺しなさい‼」


 怒鳴られたので、一点集中からの、サンショウウオにダイレクトアタック。輝く氷像は粉々になって、ボス戦が終了。


「疲れた……。もうやりたくない……」

「ほーら、すぐに投げ出すんだから。アレンって、自由気ままね。いざという時だけ本気を出して、他は触れるだけ触れて終わり。まるでじゃれ合う猫みたい。違う意味で羨ましいわ」


 犬の次は猫かよ⁉ 動物に例えるのやめてくんね? 恥ずかしいんだけど‼ というのはさておき、第四層の樹海へ向かうのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る