第57話 クリムが人になった結果

 

 ――シャカシャカシャカ……。


 フィレンが何かを振っている。横目で見ると、ウロコが付いた水筒のような物。何のウロコかはわからないけど、気になってしまう。


「あの……。フィレンさん? なんすか? それ?」

「これのことりょん? 毒水入りのボトルりょんけど……」


 毒入りマジっすか……。でも、ヌママムシは毒持ってるから、問題ない。関係ない……。俺は聞いたことを、全てかき消す。


「りょん? これ、ルグちゃんのおつかいりょんよ? ルグちゃんは、ルグアのことりょん‼」


 へぇ~。ルグアのおつかい……。って、えっ⁉ ルグアからのおつかい⁈ どど、どうすんの? 毒入りのボトルを‼


「一緒に飲むんだりょん♡ 早く会いたいりょんねぇ~」


 マジガチ? ルグアが毒飲むん? ゲームだから、リアルには支障はないと思うけど……。そういえば、俺の彼女ってHP100だけなんじゃん‼


「それがどうした? なんだりょん。ルグアから頼まれたおつかいだから、気にしなくていいりょん♡」


 フィレンがニコニコと微笑みながら、ボトルをひたすら振り続ける。何がなんだか……。謎が解決するかと思いきや、さらに謎が増えてしまった。気分転換しよう。うん、そうしよう。


「話変わるけど、クリム以外みんな人じゃん? クリムもなれるの?」

〖それは、我もよくわからん。フィレン殿、なにか知っておるかね?〗


 いや、どうしてフィレンに聞くんだよ? というのは置いといて、みんなの視線が一点に集まる。


「そのことなら、すでに実装されてるりょん‼ 試してみるりょん♡」


 なんか気になる。低く渋い声のクリムが人になったら、どうなるんだろう? ワクワクが止まらない。


〖そうか、ならやるとしようかのう……。みな顔を伏せてくれんか?〗


 どうして? 質問したいが、はよはよと催促されたため、指示に従う。ただ、風魔だけは腕を組んで目をつぶっていた。


 ◇◇◇数分後◇◇◇


『みな顔を上げてよいぞ』


 聞こえてきたのは、可愛らしい高い声。一斉に顔を上げると……。


「「だ、誰?」」


 風魔以外の声が重なった。なぜなら。見た目は完全に女性で、胸はボヨンと揺れるくらい大きな巨乳。

 長い髪は茜色に染められ、黒いメッシュが入っている。ほんと誰なんだよ?


「クリムじゃが……。なにかおかしいとこでも?」


 大ありだよ‼ 大あり‼ イメージと違うからね。完璧に裏切られたからね‼ クリムが男なのは知ってたけど、女体化しているんだよ?


「でも。違和感はなくなった。アレン。ボスが先」


 風魔は全く空気を読まない。風属性なのに……。少しだけでもいいから考えてよ。

 ポカンと口をあける俺と他三人。クリムと風魔は、ただ突っ立ってるだけだった。

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