第41話 氷竜と戦うはずが……

「お、大きいっすねぇ〜。これと戦うんすか?」

「そうなんだが……。どうやら私の知り合いのようだ……」


 知り合い? まだエネミーで知り合いがいるの? やっぱり人脈が広いなぁ〜。


「おーい、アルス‼ こっちだ‼」

〖誘導ありがとうございます。着地面積を縮小しますね〗


 アルスという名前の氷竜は、雷夜同様、人の姿に変化する。戦うんじゃなかったの⁉ ボス戦関係無し⁈


「だな。ま、久しぶりに会うやつがたくさんいるんだ。それだけはわかってくれ」

「ハイ……」

「んじゃ、第十層に……」


 いや、九層ほぼスルーだよ⁉ 攻略してないじゃん‼ ただ歩いて話して、小型エネミーと遭遇エンカウント無しのまま終わってるよ⁉ 攻略している感が全く無いんですけど⁈


「なんなら、薬草摘みでも行くか?」

「あたしも賛成です。せっかく人の姿になれたのですから、少しはたしなみも楽しみたいですね」

「決まりだな」


 いや、ルグア即決すぎ‼ アルスもしっかり話題を合わせてるし‼ しかも、意気投合してるよ⁉

 それはそうとして、採取ポイントに移動を始めた二人を追う。まるで友達であるかのようなやり取りに、友人が少ない俺は改めて友を作る大切さと楽しさを学んだ。


「ルグアの良いところは、やっぱり話題のレパートリーが多いからなのかな? 同じゲームをしている俺は、RPGしか遊んでなかったし……」


 もっと様々なジャンルで遊べば、話題も広くなっていたのではないか? 遅すぎる答えに罪悪感を覚える。

 "類"は友を呼ぶ。多分、この"類"という言葉には、話題にできるレパートリーの数なのだろう。


 話題が多いと趣味が合う人も、会話に入れる人も増える。人が増えると友達も増えていく。ルグアはそれができるから、友人が多いのかもしれない。


「よし、着いたぞ‼」


 ルグアが足を止めた場所には、たくさんの氷でできた花。触れるとほんのり温かい。冷たいはずなのに、温かい。

 俺はアルスと一緒に花を摘む。たくさんの花を片っ端から、優しく丁寧に……。最終的に合計200本の花束。


 このままでも、ブーケトスができそうだ。いつか、ルグアと結婚したい。でも、十八歳にならないと結婚できない。


「あと2年じゃん⁉ 結婚したらぁ〜……。」

「アレン。変な妄想はするな‼ また別方向に意識が逝ってるぞ‼」


 結婚したら、子供作って……。大家族になって……。家族全員でゲームの大会に……。


「おいおい、それは無理だ。私は出場できないからな‼」

「そうなんすか⁉」


 気づいた頃には、また後ろ襟を引っ張られていた。これも幸せでしかない時間。氷の世界から、カフェテラスが建ち並ぶ商業エリアへ移動する。

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