第11話 In a sentiment al mood.
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(通信開始)
<sideA>
サナダ)『…私が負けました。』
判定員がマエダ側に高らかに旗を上げる。
判定員) 「勝負あり!勝者、訓練兵3746番、マエダ・ゴロウ!!」
決闘実記:
皇紀2781年(西暦2120年)6月14日 午後16時35分:終了 勝者 3746番 前田 吾郎
(木戸・佐藤・兵士達)
「ウオーーー!!!や、やったー!!マエダ!マエダ!マエダ…。」
〜阿波踊りの大合唱〜
サナダとマエダは余力を振り絞って立ち上がり…吹く風に倒れそうになりながらお互いに対峙した。
マエダ) 「え…何?私…。」
サナダ) 「ジャッジの言った通りです。…私の身体はもう動かない(笑)。あのキックたった1発で(苦笑)…あれは反則です。(笑)いや、完敗です。」
マエダ) 「…いえ!いえいえ!!そんな筈ないでしょう?取り消しましょう!取り消しましょう!!私は除隊して貴方のお父さんの仇を探すんです。…こんな形で親子の話が終わって良い訳がない!私が…」
サナダ) 「違うんです(笑)。それはまたいつか必ず…でも、それよりも私にはもっとやりたい事が出来たんです。
私は貴方と戦友になりたいんです。
そしてこの…どう仕様もなくメチャクチャな世の中を、
共に…
闘い、
共に…
変えたいんです。」
マエダ) 「…またそんな大それた事を、サナダさん(泣)。
…でも私みたいな、
…でもそれが私みたいな臆病者でいいんでしょうか?
私…なんかで…。
ゴホッ(血)!!」
サナダ) 「もう言うな(笑)ゴロさん。」
「グッ(血)!!」
…サナダとマエダは、それぞれお互いの肩にもたれ掛かり合いながら、立ったまま失神した。
ー4時間に渡る決闘は太陽を赤く傾かせ、
死闘を生き延びた
“鬼”と“臆病者” に、
互いを支え合う形でリング上に
“人”
という長い影を描かせた。
木戸) 「た、担架じゃあー!!早く!!」
佐藤) 「み、皆さん手伝ってー!!」
(兵士達) 「ま、前田ー!!」
「真田さん!しっかり!!」
「(泣)二人共俺らの誇りじゃぁ!」
「同僚!!バンザーイ!!」
その日は就寝時間まで兵舎内では、主役2人そっちのけのお祭り騒ぎが続いた。
ー教官達も決闘の習わし(決闘の処理後は自由時間)に則ってその夜は兵士達の好きにさせた。
診断結果:
真田 海衆:背骨及び左腕、肋骨複雑骨折
ー全治4ヶ月
前田 吾郎:頭部、顔面及び全身複雑骨折
ー全治4.5ヶ月
これによって、2人は同期よりも1年遅れて訓練所を卒業する事になった。
※ 決闘から1週間後 ※
ー医療室にて
マエダ) 「あ、木戸さん。ミカン取ってください。ちゃんと甘いの選んで下さいよ?さっきのはちょっと酸っぱくて…」
木戸) 「…はいよ。」
マエダ) 「あ、携帯とってくれます?」
木戸) 「いっぺんに言えよ!!おまはんちょっと調子に乗って…」
マエダ)「あ!あ! 重傷者に向かってなんて事言うんですか!? 酷いですよねぇ!ねぇ、檜山さん?」
檜山) 「お、おう。」
サナダ) 「佐藤さん…。アナタ親戚何人居るんですか? …もう50枚はサインしましたよ?まさか売って…。」
佐藤) 「べ!べらんめぇ!! 江戸っ子にゃ親類が多いんだよ!後50枚、さっさと書いちまってくれ。」
木戸) 「…商魂逞しいのぉ。」
佐藤) 「言っておくけど、チーム吾郎に入れてやったのは俺だかんね!?俺がゴロちゃんの最初の友人だからね!!」
檜山) 「お前、真田さんにそんな事言って知らないぞ? 真田さんは指だけで2m以内のものは破壊出来るんだぞ?」
佐藤) 「何!? えと、嘘?これは…、違うんだ。その、」
サナダ) 「…檜山さんの冗談ですよ。」
佐藤) 「えぇっ!? もぉー!!!」
(一同) 「(笑)。」
木戸) 「しっかし1年も卒業遅れるとはのう…。ま、補講に半年掛かるんじゃ、仕方ないがの。」
佐藤) 「木戸ちゃん!俺たち、戦場では1年先輩になるんだよな!?
ーゴロちゃん、絶対俺のいる部隊に来いよ!色々教えてやっから!! 可愛い後輩にな(笑)。」
マエダ) 「もう先輩面かよ!…勝てねぇなぁ。サトちゃんには(笑)。」
檜山) 「(笑)…しかし戦地は益々拡大していて…これからは世界中に飛ばされるぞ。
だから一緒に戦える確率はごく僅かだろうな…。」
サナダ) 「佐藤さんの言うように同期とは言え私達は1年戦場経験がズレる訳ですしね。」
マエダ) 「…大丈夫ですよ。少なくとも私達は1年以上ここで過酷な訓練を共に乗り越えて来て…、今はもう皆さんとは家族です。
だから何があっても…絶対大丈夫です(笑)。」
(佐藤・木戸・真田・檜山)
「…そうだな(笑)。」
※ 一 年 後 ※
教官) 「サナダ、本当にいいんだな? お前の成績なら特殊作戦部にも入れるんだぞ?」
サナダ) 「私は…あいつと同じ部隊がいいんです。アイツ…マエダは…いつか世界を変えてくれる気がするんです。その日まで私は…彼を守り、そして必要なら盾にでもなる覚悟です…。」
教官) 「そうか。…貴様も変わったな。では行けー!!」
「はっ!」
サナダは敬礼し、教官室を出た。
ー今日は訓練所最終日だ。
各々の配属/所属部隊が発表される。
マエダ) 「わ! 俺は陸軍第421部隊!!
檜山さんの居る隊だぁ!! 良かったぁ! 戦地はマレー半島:クアラルンプール基地行きですって。 カイちゃん(サナダ)は?」
サナダ) 「…偶然ですね。私もゴロさんと同じ陸軍421です。」
マエダ) 「やったー!!これで戦友ですね!! カイちゃんが味方なんて…もう怖い者なしです!!!」
サナダ) 「怖いです。」
マエダ)「えっ?」
サナダ) 「戦場。 私はちょっと怖いです。」
(※ハッキング成功/スクランブルモード稼働
しばらく発見される事はありません。)
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<sideB>
国王は笑いながら言った。
国王)「やっと思い出したか! 貴様ののろまは死んでも治らん。
…本当になぜお前みたいなタコ坊に真田が絆された理由がわからん!」
真田、という言葉に前田は反応した。
前田)「じゃあ何故貴方がその真田を名乗っているのか、聞かせて下さい。」
前田の声が震えている。こんな彼の声は初めて聞いた。
国王)「…いいだろう。
原因は貴様だ。
貴様が俺の息子同然だった真田 海衆を奪ったのだ…奴は生まれながらの英雄だった!このC.T.Bの世界に名を轟かせる伝説で、最高の漢だった!!
…それがどうだ? 練兵場で貴様と馴れ合ってからは炎のような闘争心が消え、生ぬるい、貴様の尻拭い役に成り下がってしまった!
ー"実力・知性・影響力"
どれを取っても俺が育てた兵士の中でそのすべてを持つ最高の軍人を
貴様は殺したのだぁ!!」
…国王は吐き捨てた。
前田は一瞬目を見開いたが、すぐ落ち着きを取り戻した。
前田)「…答えになってませんよ。…もう一度聞きます。なぜ貴方は今カイちゃん…真田国王を名乗っているんですか?」
王「(笑)もう少し黙って聞いていろ。
ー奴が練兵場を卒業する日、奴は俺の推薦ではなく貴様と同じ部隊に行くと言った。
その時俺は本当に貴様に真田を奪われたのだと思った。
ー最高の愛弟子を取られたのだと。
そして考えた。
…なら貴様と真田を苦め、追い詰めながらとことん利用してやろうとな。」
〜(回想:練兵場最終日)〜
教官)「サナダ…前田に付いて行っても貴様には何も残らないぞ?」
サナダ)「今日まで…ありがとうございました。…もう決めた事なので。」
教官)「いや、ならん!そんな事は俺が断じて許さん!決定事項に対する貴様の態度は私情では済まされん。国家としても大損害だ!!」
サナダ)「…これまでのオヤジの私への配慮は感謝してもし切れないと思っています。しかしー」
教官)「これは反逆である!き、貴様は与えられた任務に真摯に向き合わなかった罰で、これは反逆罪なのだ!!
…も、もし、いや、ーこのまま前田と行動するが良かろう。しかしいつ何時、国からの反逆者への粛清が『後方から』来るかわからんぞ?
…あのタコは前だけ向いていればいい。
しかし貴様は常に前後から狙われる。
それで良いのか? どうだ?
…考え直す時間を1分やる。」
サナダ)「もう…自分の中ではとっくに結論が出ています。
(笑)…畢竟、私は弁慶で彼は義経なのです。」
教官) 「サナダ、本当にいいんだな? お前の成績なら特殊作戦部にも入れるんだぞ?」
サナダ) 「私は…あいつと同じ部隊がいいんです。アイツ…マエダは…いつか世界を変えてくれる気がするんです。その日まで私は…彼を守り、そして必要なら盾にでもなる覚悟です…。」
教官) 「そうか。…貴様も変わったな。では行けー!!」
「はっ!」
サナダは敬礼し、教官室を出た。
〜(回想終わり)〜
前田)「なんで…カイちゃん。」
教官)「後に真田と貴様が別部隊になった時、俺は奴を俺の部隊に入れた。真田はすでにこの戦争でも伝説的英雄だったが戦況が悪化し、奴の顔を知る者はほとんど生きていなかった。俺はここに目を付けたのだ。」
前田)「貴方はなんて事を…。」
教官)「タコにしては鋭い勘だな(笑)
そうだ。俺は作戦中に自分の部隊を奴もろとも殲滅した。
…そして俺は真田になったのだ」
(通信終了)
GPS
シルバニア王国東京都皇居内にて
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