第2話 店番は、老夫婦の交代で

 この店は老夫婦で切り盛りされて久しい。かつてのことはわからないが、今は、特に配達先があるわけでもない。あくまでも、店頭で売るだけ。もちろん、持ち帰って飲むことも可能だが、たいていの人は、ここで飲んで帰る。

 それが、立飲み酒屋の立飲み酒屋たるゆえんと言えば、そうだろう。


 店番は、夫婦のどちらかがやっている。片方が出ているときは、もう片方は上の自宅で休んでいるか、さもなくば、どこかに外出している。それが相場。

 開店は、朝9時過ぎ。閉店は、19時。おおむね10時間の営業。

 その間、夫婦が交代で店のカウンターに立つ。大体、この時間ならこちらと、特に問題もない限りそのとおりの「シフト」で運営されている。

 朝9時過ぎから開いている飲み屋というのは、岡山市内にはあまりない。これが県をまたいで兵庫県あたりにでも行けばそれなりにあるのだが、岡山だと、そこまであるわけではない。

 だが、この立飲み酒場、昔から朝から夕方までの営業。路地の左側も右側も、パチンコ屋。パチスロを打つその合間とか、終わった後に来る客もいる。もちろん、パチンコ類を一切しない客で、前回紹介した女性のような仕事帰りにちょっと立ち寄る常連客もいる。夜勤帰りに朝立ち寄れる酒のある店があるようでそれほどないのが、岡山という街。なかには夜勤明けなどで午前中に寄る人も、いないではない。


 しかしこのところ、かつてほどの別にぎわうということもないようで、どっと客が来るとすれば、夕方の17時30分頃から19時までの間。先程の女性客もそうだが、大体、仕事帰りの人が増える時間帯に、この店の客は多くなる。もっとも、それほど人が来ないで終わる日も、ないわけではない。特にこの2021年の度重なった緊急事態宣言やまん延防止対策による店での飲酒禁止措置もあって、なかなか人出がない中でのことである。この10月1日より約1か月少々経った今に至るまで、完全に客足が戻ってきたとはお世辞にも言い難い中、それでも、その時間になればいつもの常連客に加えて、出張帰りの客や旅中の客、そして近場ではあっても一見(いちげん)の客、さらにはビール会社の支店長といった人も、時々来られる。


 この店は、19時ちょうどをもって閉店となる。

 特に客が多いからといって延長するといった「さじ加減」は、ない。

 そこは、時間厳守、なのです。


 ぼちぼち客が引いたのを見計らい、女性店主は看板の灯を消し、店の前に置かれた看板も横にし、そしてシャッターを閉じる。店前の看板が路地に向って名前を見せていれば、そのときは営業中、横になっていれば、そのときは営業していないことを示すという塩梅である。


 一日を終えた立飲み酒場は、翌朝9時過ぎ、再びシャッターが開き、看板を横に向けて店名を路地の東西に示すことによって、その日の営業が始まるのです。


 さあ、今日は、どんな日になるのでしょうか?

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