第17話 一方その頃、暁の旅団は (5)
冒険者ギルドでしばらく張り込んでいると、ランスが現れた。
2人女性を連れているようだ。
パーティーメンバーだろうか?
ランドルフたちはランスの前に歩みでる。
「よう、ランス。元気にしてたか」
「…………ランドルフに、暁の旅団のメンバーか。なんの用だ?」
なんの用だと、こいつ、わざわざ俺たちが出向いてやったってのに。
もちろん、ランドルフはそのように思っている事は口には出さない。
「いや、お前が泣いて喜ぶ話を、持ってきてやったんだがな」
「……泣いて喜ぶ話?」
ランスは訝しむ表情をしている。
ふん、話を聞けば泣いて喜ぶだろう。
「いや、お前を、暁の旅団に再加入させてやろうと思ってな」
「は!?」
は!? じゃねえだろ。
お前のような無能を、再度加入させてやる、と言ってるんだ。
泣いて喜べ。
「………お前ら、俺をどうやって追放したか、覚えてないのか?」
「ご主人様、こいつらが例の?」
「ああ、俺が追放された元のパーティーだ」
そういえば、こいつを魔物の囮にして追放したんだっけ。
ちっ、済んだ事をうじうじと。
「よくもまあ、ご主人様の目の前に、ノコノコ顔を出せた。今更になって、ご主人様の優秀さが分かったのか? このクソ馬鹿どもは」
「あ!? なんだ、このお子様は。おいおい、ランス、しっかり教育しとけよ」
そう言ったエディの腹部に、ミミの強烈なボディーブローが決まる。
エディは悶絶して、その場にうずくまった。
「恥知らずとはこの事ですね。ランス様を追放しておいて、今更になって戻ってきて欲しいとは。あなた達が逃げ出した、ゴブリンキングはランス様が討伐してくれましたよ」
「ランスがゴブリンキングなんて、討伐できるわけないでしょ。まさかランスの言ってる強力なスキルとやらを、信じてるのこのバカ女は?」
そう言った、エリーの衣服をソーニャは、目にも止まらぬ速さで両手短剣で切り刻む。
エリーは叫び声を上げ、必死に自身の体を隠した。
「こ、この強力なパーティーメンバーがいたから、ゴブリンキングを討伐できたんだな!? おい、ランス。今はバレてないかもしれないが、そのうち、お前の無能さに嫌気が指して、こいつらもお前を追放するぞ!」
ランスはやれやれといった顔をして、連れの二人と顔を見合わせている。
なんだその態度は!? 勘違いするんじゃないぞ!
「やれやれ、このバカは人の話を聞きませんね。ランス様がゴブリンキングを倒した、と私は言ったでしょう。耳ちゃんとついてますか?」
「ご主人様を追放するような無能の極みたち。何を言っても無駄」
「無能の極みだと!? マグレでゴブリンキングを討伐できたからと言って、調子に乗りやがって!」
「はっ! ここまでバカで無能だと笑えますね。よくランス様はこんな無能なバカどもを、我慢してやっていましたね。その忍耐強さに感服します」
「こいつらに対しては、ゴミクズという言葉でも足りない。存在じたいが害悪」
ぐっ……くそぉ!!
思い知らせてやりたいが、連れの二人が邪魔だ……。
「お前らが見捨てたカルカスは、俺たちの目の前で、ゴブリンキングに見せしめで殺されて死んだぞ」
は!? それがどうした!
ちっ、エディとエリーは下を向いてやがる。
無能のランスが、俺様に講釈をたれやがるとは、もう我慢ならねえ!
ランドルフは腰の片手剣を抜き、ランスに斬りかかる……が。
気がつくと、鼻血を出し、その場に膝をついていた。
なんだ? 何が起こった!?
「この無能、ランス様に殴られたことも気付いてませんよ。正にあなたがたが信じなかった、ランス様の強力なスキルでやられたというのに」
「ご主人様は、この程度で済ませて優しい。お前らは、一度死んで生まれ変わったほうがいい」
ランスにやられた!?
バカな……本当なのかランスが言っていた、強力なスキルというのは?
くそう、こいつら……俺をそんな上から見下したような目でみるんじゃねえ!
「お前ら、カサンバラ村の人たちを討伐したと騙して、逃げ出しただろ。あれは明確な犯罪だから、そろそろ捜査が行われる。覚悟しとけよ」
ランスはそういうと、冒険者ギルドの中に入っていった。
「おい、ランドルフ! ランスの野郎、お前に目にも止まらぬ攻撃を……。あいつが言ってたスキル、もしかしたら本当なんじゃねえのか?」
「確かに今の攻撃は見えなかったけど、ランスが攻撃してたのは、間違いなさそうよ」
「うるせえ! あんな無能が、あんな無能が……俺は認めねえぞ! それより、まずはマクルーハン卿だ。ランスの野郎たちには後で目にもの見せてやる!」
そういってランドルフは、鼻血を垂れ流しながら立ち上がって。
フラフラと惨めにその場から去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます