一章 棟梁襲名 十五、別れ
◉登場人物、時刻
???? 主人公。次期棟梁。
戌初の刻 午後七時から午後八時。
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一章 棟梁襲名 十五、別れ
……パチリ……パチリ……パチリ……
見事な庭に面した
庭の
開いては、閉じる……閉じては、また開く……
光の届かぬ無明の中、
白き
「………………そうか、戻りきたか…………」
その
丁卯四年如月十四日 戌初の刻 ????
………………バチッ
庭の
屋形警護の
侍衆が
寒々しく立っている。
大きかったはずの
小さな
濃い影が
その全ての光景が目に入ってきては抜けていく……
守護所
何一つ変わらないのに、決定的に“何か”が違うと分かる、父の姿。
これが「死」なのだろうか?
全く心が波立たない。
自分は薄情なのだろうか、と。
遠い
……然もあらん、彼らにとってこれは絶好機だ。
齢九つの童の当主など、飢えた獣達には
美味そうな肉にしか見えぬであろう。
……別に逃げ出せば良いのだ。
そもそも
どうせ奪われるのであれば、全て差し出せば
良いのだ。
狭き土地を奪い合い、
そうしなければならない理由など
無いのだ。
……だが果たしてそれで良いのか?
自分の代で投げ出して良いのか?
ーーー何より
…………その責務を投げ出して良いのか?
部屋の
この“闇”はこの先、消える事はないのだ、何とはなく、そう感じた。
……心が
この様な事を考えねばならない自分が情け無く、物言わぬ父に申し訳が無かった……
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◉用語解説
【対面所】
将軍や当主が家臣や他家の使節に謁見する為に作られた場。大広間で宴なども催された。会所。
【小間】
茶道で四畳半より狭い茶室の事。ここでは狭い部屋の事。
【蝙蝠扇】
竹や木を骨として片面に紙を貼って作られている扇。開いた姿がコウモリが羽を広げた姿に似るところから、この名がある。扇子。
【双眸】
両目。
【常御殿】
屋敷の中で当主が日常の生活する空間。
【主殿】
屋敷の中で最も主要な建物。基本的には対面所のある建物を指す事が多い。
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