第2話 願う者に願う者


「駄目です! 制御できません!」

 宇宙船のパイロットは慌ただしく叫んだ。


「まだだ、エンジンの出力を最大まで上げて惑星の重量を振り切れ!」

 艦長が大声でパイロットに指示を飛ばしたが、その直後船全体に大きな衝撃が走り乗組員達は壁や床に身体を叩きつけられた。


「何事だッ!」

 揺れが収まると、艦長はパイロットのもとへ向かった。


「エンジンの出力が上がりません、どうやら軌道上にあった隕石に当たった模様です。宇宙船の外壁も損傷しており、このままでは大気圏の突破も困難になります!」

 ええいと艦長が声を漏らした。


 宇宙船の計器はどれも既に限界を超えた値を示し、あちこちから警報が鳴り続けている。

 するとパイロットや他の数名の乗組員達が哀愁のこもった瞳を艦長に向けた。


「……ここまでか」

 小さく息を吐きながら艦長は呟いた。


「……覚悟はできています」

 パイロットの言葉に乗組員達も一様に頷いた。


「皆、これまで本当にご苦労だった。今まで様々な星を調査してきたが、おそらくこの星が我らの訪れる最後の星となるだろう。さぁ、あとはせめてこの大気圏を突破し無事着陸できることを祈ろうではないか」

 艦長の落ち着きはらった言葉に、乗組員達も静かに目を閉じ着陸の無事を願った。


 しかしそんな彼らの願いも虚しく、船の外壁は大気との摩擦でみるみるうちに真っ赤に燃え、宇宙船はその惑星に着陸することのないまま大気圏の途中でちりひとつ残さず燃え尽きてしまった。






 するとその遥か下の地上で、一人の少年が空を指差し声を上げた。


「あ、流れ星!」

 すると、隣を歩いていた姉も空を見上げた。


「うーん、もう消えちゃったみたい。願い事した?」

「ううん、すぐ消えちゃったからダメだった」

 少年は頬を膨らませ残念そうに頭を振った。


「じゃあ、今度見つけたらどんなお願い事するつもり?」

 姉の問いかけに、少年は満面の笑みで答えた。


「いつか、宇宙船に乗って色んな星を冒険できますようにって!」


 姉はうふふと笑うと、二人は仲良く手を繋いで家路へついた。



     

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る