幸せな家

CHIAKI

第1話 家と家族の違い

私は、家と家族というのは全然違うものだと思う。


家は住む場所だけど、家族は家の中に住んでいる人たちを指すのだと認識している。


人々は一般的に、結婚や血のつながりで一緒に住むことになるでしょう。前者は自分の意思で一緒に住むことを決めたが、後者は選ぶ権利がなく生まれつきのつながりで一緒に住むことしかできない。


だから、家族というのは、仕方なく同じ屋根の下で住むという解釈が妥当だと思う。もちろん、そうでもない人もいるけど。


まあ、子供のころはあまりこういう違いを知らなかったけど。いや、自覚はなかったというのはもっと正確でしょう。


私たちは4人家族で、ごく普通の一般家庭だった。親たちと娘二人って、どこにでもありそうな家族構成だ。だけど、私たちは笑顔が絶えない家庭じゃなかった。


うちの家族内では、喧嘩の主な理由はギャンブル好きな父が作った借金地獄だった。どうやら、結婚前はもうそうだったけど、結婚しても子供が生まれてもこんな状況は全然改善しなかった。正直、私がずっと思っていたのは、付き合っていたころからこの状況を知っていたのに、何でそのまま結婚したの?愛があれば、何でも許せるということ?それとも、結婚した後変わるとでも期待していたのかな?いや、人間の本性ってそんなに変わらないから、そういう期待の方は大間違いでしょう。後に、父の女性問題も発覚し、不倫の証拠が掴めたとしても、二人は離婚しないまま毎日のように喧嘩をした。


そんなに辛いなら別れればいいのに。何で子供や経済状況などを言い訳として、別れられないと言うの?借金を肩代わりする方がもっと大変でしょう?


こんな嵐のような家庭環境に育つ私は、家というところが大嫌いだった。


帰ったらまた二人の罵声が聞こえるし、どうしても落ち着かないし、そして何よりも自分が八つ当たりされたことが多々あった。特に母の方は溜まっていたフラストレーションがこっちまでぶつかって来ることは日常茶飯事だった。


何で私だけに?子供のころの私は理由などを深く考えてなかったが、今思うと多分私が嫌われたから。でも、何で妹にそういうふうにしなかったの?それは当然、妹を可愛がっていたからでしょう。


あの頃、差別待遇される度に抗議をしても、母はいつも自分の行為を正当化し言い訳ばかりをした。自分は子供のことを平等に愛していたし、差別なんかしなかったという一点張りだけで、差別なんかない、ただこっちの気のせいで考えすぎとして片付けようとした。


妹も自分がより愛されていたことを武器にして、思うままにやりたい放題だった。だって、何かあったら、責められるのはこっちだから。


尚更、家というところが大嫌いだった。


だけど、初めてこういう家庭状況がおかしいと気づいたのは小学生になってから。初めて、他の人の家族を見てて、気づいたことは、


「何でみんなはあんなふうに幸せそうに見えるの?」


いつもニコニコで、愛されているような友達を見て、私は羨ましいという気持ちを初めて味わった。嫉妬ではなく、単なるあんな風にもなりたかった。


誰かに愛されたいし、そして暖かくて落ち着ける家が欲しかった。


でも、私は家族を選べない。生まれつきこうなったから、仕方がなかった。


その時、私はこういうことを考え始めた。


「幸せな家と幸せな家族、どちらが手に入れやすいだろう?」

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