栗ごはん
生り物の木、所謂実の成る木を庭に植えてはいけないという迷信がある。
落ちた実は腐敗し、薬効のある実を求める病人が集まるので縁起が悪いらしい。
しかし私の家の庭には、枇杷、柿、栗、見事に生り物ばかりが植わっている。
他にはタラの芽、ヒトツバタゴや紫陽花、春先になれば蕗の薹や茗荷や野蒜なども生える。
畑を作れば自給自足が出来るのでは無いかと考えはするが、近所にコンビニがある限りやらないだろうと思う。
私は晴れた日に、窓から二階の屋根に出て布団を干しながらよく日向ぼっこをする。
二階の和室は三面が木製の召し合わせ框の引戸の大きな窓で、踊り場のある北側だけ小さな窓になっている。
南側から外に布団を出して、その上に寝転んだ。
晩秋の小春日和の午後、ぽかぽかとした日差しにウトウトと眠くなる。
―栗ごはん…
―栗ごはん…
食い意地の張ったすうの声が夢に忍び込む。
確かに栗もたわわに実ってご近所に配っても食べ切れない程だ。
私は長靴を履いて庭に出ると、足でイガを割りトングで栗の実を取り出した。
―栗ごはん…
―渋皮煮…
―栗ごはん…
―渋皮煮…
「栗ごはんしか作らないよ」
要求が増えているではないか―そうは言っても結局両方作ってしまうのだろうと、採った栗を籠に入れながら私は思った。
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