余命と付き人
バブみ道日丿宮組
お題:刹那の足 制限時間:15分
余命と付き人
人より起きるのが早かった。
その分眠るのもはやい。
「……」
ただ普通の人として毎日を過ごしてる。
それはおそらく幸せというものに分類するのだろう。
平和。
それを願っても叶わない人たちもいるし、自ら願ってもないことで争う人たちもいる。多種多様な人がたくさんいる。動物も同じで……弱肉強食の世界がそこには広がってる。
僕は一人だった。
両親は早めに死んでしまったし、祖父母だって産まれたときにいなかった。
大きな家で唯一人残された。
援助という援助はもらわなかった。
ヘルパーさんがやってきたぐらいで、それも中学になれば終わった。
「……」
空は青い。どこまでも続いてく。
同じ景色を見てる。
色が変わることがあっても、変化のない世界。
この色彩をあとどれくらい見れるだろうか。
「点滴変えますねぇ」
看護師がやってきた。
「……お願いします」
点滴を変え終えると、看護師は病室から出てった。
変わらない毎日だ。
けれど、死の気配が、刹那的に近づいてる。
治らない病気で、余命は2、3年だという。
高校に行くことは退院してもおそらくない。高校卒業の資格をとって、大学に向かったほうが懸命だろう。
その前提は病気により不可能であるのではあるが……。
「……」
友だちは月に1度か2度尋ねてくることはあるが、それ以外はなにもない。あるとすれば、本を買ってきてもらって、読み終えると売ってもらうことか。
売ったお金は経費として、友だちにあげてる。
それ以外に友情の返し方がわからなかった。
もう一緒に遊べることはないのだから、せめてなにか思い出が欲しかった。
「……はは」
お金をあげることが思い出なんて……ね。
馬鹿らしい。ほんとうに救いがない。
「……ねぇ、君はどうしていつもすました顔で立ってるの?」
部屋の片隅にいる人物に今日も問う。
スーツをきた幼い少女。
それが置物のように毎日いる。一緒に暮らしてるといってもいい。
看護師も友だちもいない人のように取り扱ってるから、もしかすると幽霊かもしれないとか思ったりもしたこともあったが、誰かが会釈するもあるからそういうわけでもないらしい。
それに休憩時間のように病室に数分いないこともある。
だから、動物ではあるんだと思う。
なんでここにいるのかはわからないけど。
「……いいけどさ」
好きなだけいればいい。僕は別に止めはしない。
先がない人間のそばにいたっていいことはない。
失うという結末が待ってるのだから。
「……はぁ」
気にせず本を読もう。
今日はちょうどホラー小説が読み終える頃合いなのだから。
余命と付き人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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