神様が無能すぎるので 邪神が世界を救う

黒井丸@旧穀潰

第1話 神様と名乗る奴をブッ殺してみた

 本当は10話くらい書いてから発表しようと思いましたが、脳みその容量が小さいので書きためは出来ないみたいです。


 閲覧数が増えればモチベにつながりますので、宜しければごひいきのほどを…


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 みなさんは1980年とか1990年代の映画や漫画で『邪神を祭る光景』というのを見たことがあるだろうか?


 客を怖がらせるために置かれた頭蓋骨のオブジェクト。

 キリスト教の悪魔をアレンジした邪神の像。

 ひれふす信徒に、なんかの骸骨を頭に被った司祭。

 そして、石の台に置かれた生け贄。


 場所はだいたいジャングルの奥地か地底神殿がメジャーだが、変わり種で日本国内だったり中国の奥地だったりもする。

 まあ、漫画の世界だと日本の洞窟に修行場があったり東京ドームの地下に闘技場がある世界だって有るのだから、関東(おそらく群馬か埼玉)にボクシングの邪神を崇める集団がいても不思議ではないだろう。


 話がそれた。


 それらの非現実的な光景が今 の 目の前にある。そして、その手前には生け贄台と、司祭らしき生物がいる。


 どうやら、は宣告通り邪神としてこの世界に呼ばれたらしい。


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 神様が無能すぎるので 邪神が世界を救ってみた

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 なぜ、このようになったのか思い出してみた。


 中山啓介(30歳)はたまたま就職氷河期のため50社を応募したがことごとく落選し、唯一内定に残った建築会社の社畜として、ごく普通に365日連勤で働き続け、ごく普通に毎月65時間の残業をタイムカードの上では行った事にされ、ごく普通に午前2時まで書類を作成していた。

 そんなごく普通のブラック勤務の社畜として働いていたら寝落ちしたようだ。


 中山は変な夢を見ていた。


 神様と名乗る存在から

「一つだけスキルを与えるから別の世界を救ってほしい」

 と言われたのだ。

 

 小説なら喜んで飛び付く案件だろう。

 だが、クソ客だらけで契約書の一文見落とすと1500万の損害を出すような地獄の建設業界に居た中山に隙は無かった。

 様々な言葉に隠れた裏を想定し、まず

「一つだけ。という条件には制限は無いのか?」

 と尋ねた。


 中山は汚客と呼ばれるクレーマーから『適当に窓を付けてくれ。色は何でも良い』と言われて取りつけたら『何でもと言ったけど、こんな色はうちの家に合ってない事くらい考えたらわかるだろ!』と言われた事があるからだ。

 なので条件設定については慎重に質問を重ねての質問である。

 これに対し目の前の自称神は

「ああ、無い。どんな能力でも一つだけなら与えよう」

 全ての頂点に立つ存在として、破格の条件を出してやったのに疑われるとは思って無かったのだろう。

 少し苛立ちながらもあくまでスマイルのまま答えた。

 すると

「どんな能力でも?だったら願い事をいくつでも叶えられる能力でも良いと言うのかな?」

「いや、それはダメだ」

「だったら、何でもじゃないじゃないか」

 という問答から始まり、中山は悪質クレーマーの如きしつこさで一時間ほど条件について確認をした。

「…別の世界で働いてもらうんだ。それなりの見返りは出すよ」

 少年のような、老人の様な。掴みどころのない自称『神』はうんざりしたように言った。だが、彼は騙されない。

「でも『やっぱり、なし』とか『それはダメ』とか言い出すんでしょ」

 目の前の自称『神』は怒りだしたが、中山は『これはどうせ夢だから関係ねぇや』と小馬鹿にするように問答を続けた。

 中山にとってこの最悪の世の中を見る上で、これだけは外せないという視点が有った。


 ――神様なんてものはこの世にいない。


 いたら、就職氷河期でブラック企業に就職して、朝の5時から27時まで勤務とか、別の日は8時から20時まで働いた後に、21時から翌日の6時までコンクリートが固まるまで監視なんていう仕事を課す会社に天罰を与えないはずがないのである。

 なので、中山はこう考えていた。


 ――神様なんてものはこの世にいない。(2回目)


 それ故に、目の前の存在は嘘であり、願い事なんてのも騙すために言っているのだろうと推測した。


 こちとら契約直前に、不利な条件をこっそり加えた詐欺のような契約を結ばれそうになった事だって何度もある。

 だからまず

①こちらの思考を読みとることを禁止させ

②どんな願いでも一つだけ叶えられるように、口にした瞬間に約束が叶えられる

 ように条件をつけた。そして、

③その願いは後で取り消しが出来ない様に遡及性不可にして逃げ道も塞いでおいた。

 そのため病的なまでの抜け道塞ぎに寄って、以下の契約が結ばれた。


「神(以下 甲とする)は契約者 中山啓介(以下 乙とする)の願いを速やかに叶える。その契約は良心に基づくものとし、甲は乙に対し最善の相で契約を履行しなければならない。(以下145条に渡る特記事項があるが長いので略)その代わり、乙は異世界に転生し、異世界を救う」


 契約を何度も細部まで確認し、約束を反故されないように契約内容を書面にして担保までとった。


「…………ここまでややこしい人間は初めてだ」


 と目の前の自称神は呆れたようにいう。

 

 だが本格的な建築関係の書類はもっと長ったらしく分厚い。

 それだけタチの悪いお客さんが多いのである。

 特に市役所とか市役所とか市役所とかは。

 そんな生物を生みだした親玉に山中は

「文句が有るなら、そんな契約書を作らないといけないような世界にした神に言ってくれ」

 と言うと、自称神は不承不承ふしょぶしょう契約書にサインした。

 それを見て中山は確認するようにサインを見て

「内容に不備が無い契約書。両者のサインに捺印。履行条件の合意。これでヨシ!」

 と十回ほど契約内容を読み返し、穴が無いかを確認して俺は満足そうにうなずいた。

 

「気が済んだかね?だったら、君が望む力を言い給え」


 うんざりしたように、自称 神が言う。

 そこで中山は、ノータイムでこう言った。



おまえ




「え?」



 すると契約書が発光し、空から無数のチェーンソーが空間を裂いて現れた。

「え?えええ?」

 驚く自称 神を尻目に、高速回転する刃が次々と体を切り裂いていく。


 目の前の自称『神』は、従順な奴隷が突如刃を向けたように驚いた。そして

「え?嘘だろ!私が死ぬ?この神である私が?」

 自分だけはルールの範囲外の存在だと思っていたようだ。

 だが、契約の力は絶対だった。

 無造作に突き出した手は、神と名乗る無能の胸に吸い込まれ、その体を粉砕した。

「な、なぜ…?」


 良い事をしてやったのに、何で自分が殺されないといけないのか?

 そんな目で俺を見る自称神。


「なぜ?」


 中山は今までの人生で出会った、ゴミクズのような客と呼ぶのも嫌な守銭奴やクレーマー、上司、役人達を思い出して言った。


「犯罪を平気で犯すような奴らや、責任を他人に押し付けて逃げるような奴が良い思いをして、正直者や普通に働いている人間が過労死したり自殺するような世界に生きていたら、


 悪事には即座に天罰が下っていれば、契約書一枚作成するだけで2時間も残業したり、建物のヒビ一つで6時間も問答をしなくて済むはずだ。

 契約金の6割を中抜きする派遣会社や、パワハラや過重労働で部下を自殺に追い込んでいながら罪に問われない会社。保険金詐欺とか、地面師とか、まともでない方法で金をだまし取った奴とか、汚職・パワハラで他人に迷惑をかけた奴に天罰も下らないのは、どう考えても神様が仕事をサボってるからだ。

 なにより、会社の金を持ち逃げした屑がすぐ捕まるような世界や、ブラック企業に天罰が下るのが当たり前の世界なら中山の友人は死なずに済んだはずだ。

 なのに、世界はそんな犯罪者たちに優しすぎる。


 そんな世界を見過ごす神なら


 中山はそう思っていた。

「………ゴミの様な会社に、ゴミのような人生。ゴミの様に不公平でインチキだらけの社会」

 中山が、これらの理不尽さに耐えられたのは『この世界に神様なんていない』と信じていたからである。

 この世界は弱肉強食。正義なんてものは存在しないし、誰も助けてくれない。

 神様なんて便利な存在がいないから、ここまで酷いのだと納得していた。


「なのに、自分は神様だ? 


 未練がましく残る神の頭を蹴飛ばし、踏みつけ、地面にこすりつける。

 毎日死にたいと思いながら生きていくような人生を作り出す神様など、いないほうがまだ良い。

 なろう系小説で、死んだ後に「手違いで殺しちゃったからチートスキルを上げよう」などと言う神を見て、つくづく「お前がちゃんと見守っていたらそんな事にはならんだろ」と中山は思っていた。

 それなのに『自分は慈悲深い神様』と勘違いした態度を取っている神を見ると、死を持って償えと言いたくなったのだ。


 過労死で死んだのに労災にならなかった先輩や、パワハラで自殺に追い込まれた同級生たちの顔が浮かぶ。

 彼らが、非業の死を遂げたのはこいつのせいだ。


 ならば、5000兆回くらいは、今までに生まれて死んできた彼らや、その他の生き物の苦しみを俺の分を含めて追体験しながら死んで欲しいと願ったのである。


「そんな!私はこの世界に…いいや、他の5つの宇宙にも無くてはならない存在なのだぞ!私を殺したらどうなると思っている!」

「知るか。こんな『地獄に行った方が楽だ』と思えるような世界ならいっそ滅んでしまえ!」

 生き地獄という言葉が有るが、少なくとも俺は地獄に行ったら納期や工期、予算などは一切気にする事はないだろう。

 死んだ方が気は楽。命が有るから苦しむのである。

 死んだ後の事なんて知らん。

 どうせ、もう少ししたら目覚まし時計で目が覚めて、吐き気のするような仕事に行かなければならないのだ。

 今日の夢はやけにリアルだけど、気分良く出勤できそうだ。

 

……………ごめん、嘘である。気分良く出勤なんて都市伝説だ。

 なので、ストレス解消も含めて中山はこう言い捨てた。


「地球が滅んだ方が、俺にとってはよっぽど世界が平和に見えるだろうよ。お前は神じゃない。クズだ!死ね、クズ!」

 某マンガの名ゼリフを自称神に投げつけて、蹴り飛ばす。

 日本…いや、世界中の社畜と低所得者の恨みを思い知れ。

 そう思いながら、反撃される前にトドメを指す。

 まあ夢なんだろうけど、中山はちょっと気分がスッとした。

「神様を名乗るなら、もっとましな世界を作れってんだ、バーカ」


 そう、吐き捨てると、中山は神と名乗る存在をバラバラにしたのである。


 ろくに給料も払わないのに、自分は良い経営者と思ってた前職のクソ社長に辞表を叩きつけた時のような顔をしながら真っ二つになった自称神の顔をみて。


「かみ(自称)はバラバラになったしんだ


 歴史ある、神の死亡判定セリフを彼はつぶやいた。

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