閑話休題 カイムの理容師



 相変わらずの執務室。


 カイムは難しい顔で腕を組んでいた。


 ソファでジェイドがコーヒーを啜っている。

 

「ヘルレアはやはり年上の方がお好きなのかもしれない」


「なんだそりゃ。お前も十分に年上だろうが。二十才くらい上だろう」


「ヘルレアはノイマン前会長がお好きらしいんだ」


「あのおっさん五十代くらいだっただろう。それを言うと確かにそうとう年上だな。で、先程から言っている、ヒゲやらモミアゲやらが、それと何の関係がある」


「だから伸ばして貫禄をつけようかと思うんだ」


 ジェイドが大笑いしている。


「俺はカイムがヒゲなんか生える前の、ガキンチョの頃から一緒にいるが、そもそもヒゲが生えるのか怪しいくらい、俺は一度もそれらしいのを見たことがない」


「それは毎日理容師に剃らせているからで……」


「戦地でも無精髭すら見なかったけどな」


「あれは常にナイフで剃ってた」


「ワイルドだな。何故そこでシェーバーを使わない」


「ゴルじいさんに怒られた。顔に傷でもついたらどうするんだ、と」


 ゴルじいさんはカイム専属の理容師だ。


「乙女への説教か。いつ肉塊になるともしれない場所で。まあ坊っちゃんスタイルを崩したいなら、ゴルじいさんに相談してみることだな」



 〜というわけで、ヒゲとモミアゲは整えるだけと相成り〜



「ヘルレア、最近ヒゲとモミアゲが結構生え揃って来たのですけど」


「……最近無精髭のままだよな、そういうのは止めとけ。代表だろう見苦しい」


 ヘルレアはカイムへ一切顔すら向けず、立ち去ったのでした。


 カイムがひとり沈没していると、ジェイドが不思議そうに現れる。


「お前、ヘルレアに何したんだ? 一人で嬉しそうにしていたぞ」



 〜さて、カイムはどうするべきなのか?〜



おわり

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