DOUBLE BLADE

@richelieu

第1話 ー魂の聖剣と真心の神刀ー

 謹啓 読者の皆様へ、この作品は「るろうに剣心」「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」「タクティクスオウガ」の所謂2次作品になってしまったことをご了承ください。

 実は、私はこの「小説家になろう」のサイトで、「神の愛より我を分かつものなし」という作品の中で、世界の歴史や先進国の少子高齢化、あるいは新型コロナウィルスの蔓延を描いた作品を書いてますが、数年前にある人が言った「日本の人口なんて4000万人もいればいい」ということを問題化したかったのですが、読者の方々から、はっきり言えば、「タブー視」された作品になってしまったので、やむを得ずこの作品を掲載したことをお許しください。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


           DOUBLE BLADE  


         -魂の聖剣と真心の神刀-


     第1章  雷(いかずち)の招待




 明治17年(西暦1884年)東京府、多摩郡の日野宿と呼ばれた地域、ここは幕末に活躍した剣客の集団、新選組「鬼の副長」と呼ばれる土方歳三の生まれた地でもある。

 その日野宿に流れる多摩川のとある河川敷にて・・・。

 緋色の長い髪に左頬に十字の傷、今年35歳になる元幕末最強と呼ばれた剣客、いや、人斬り緋村抜刀斎は明治維新後、緋村剣心と名乗り、弱き人々を助けるるろうにとして、「不殺ころさず」の誓いを立てながら、悪党(バラガキ)たちと戦っていた。

 そして、その剣心の剣術の腕前に憧れて、神谷活心流の道場の弟子となった齢12歳の少年剣士、明神弥彦、弥彦は今、竹刀を持って、木刀を持つ剣心にこの河川敷で稽古を付けてもらっていた。

 この稽古の立ち合いをするのは、相良左之助、26歳。信州、諏訪地方の生まれであったが、幕末の動乱期に相良総三を隊長とする「赤報隊」に憧れ、幼少の時に赤報隊に志願したが、その赤報隊が新政府側に「偽官軍」として粛清される際、相良総三ら幹部8名は処刑されたが、その粛清を陰で見ていた左之助は明治新政府に反感をもち、荒くれ者となり、街のごろつきたちと喧嘩三昧になっていたところを、剣心に諭され、この「剣蔵組」の仲間となったであった。

 そして、弥彦は中段の構えから八相の構えを取る剣心に対し、攻撃を仕掛け始めた。

「剣心!俺は今から飛天御剣流の奥義、九頭龍閃を真似た五擲剣を仕掛けるから、しっかりその木刀で受け止めてくれ!」

「あいわかったでござるよ」

 剣心はそう頷いたが、実はその「九頭龍閃」とは剣道の斬り方である八方向からの斬撃と突きを合わせた剣心の必殺技の一つであるが、弥彦はそこまで剣心の技を真似できないので、弥彦は頭上、左斜め、右斜め、左横、右横からの同時攻撃を剣心に仕掛けようとしていた。

「行くぜー、剣心!」

 弥彦はその掛け声と共に両手に握る竹刀を剣心に仕掛けて行った。


 しかし・・・、

「カキン」

 剣心はその弥彦の仕掛けた五擲剣を手に持つ木刀を素早く一回転させて、弥彦からの竹刀をはじき返し、その竹刀が両手から離れ、多摩川の河川敷に尻もちをついた弥彦に寄り、その頭上に木刀を構えた。

 弥彦が河川敷に胡坐をかき、腕組みをして剣心の方を向いて言った。

「参ったな、やっぱり剣心には当分かなわねえや」

 その2人に寄って来た左之助が弥彦の頭を叩いて言った。

「当たりめえだ、てめえが剣心に剣で勝てるなんざ、あと20年はかかるぜ」

 そして、その剣心の妻である薫かおるが着物を襷で縛った出で立ちで弥彦に寄って言った。その薫が緋村剣心の妻となった理由とは、「神谷活心流」の剣術を教えた神谷越路郎の娘として生まれ、旧姓は神谷。歳は24歳、剣心とは幾多の悪党バラガキとの戦いを超えることによって愛が芽生え、4年前、剣心との間に長女である華凛を産んだのであった。

「弥彦!剣心の必殺技なんて真似しないで、私の家の神谷活心流の剣技を修行しなさいよ!」

「うるせえな!ブス!引っ込んでいろよ」

「何ですって!師匠にそんな口の利き方するなんて、今日は晩御飯抜きよ!」

 その2人を宥めるように剣心が言った。

「まぁまぁ、2人共、弥彦も同時に五つの斬撃を出せるまで成長したでござるよ」

 ここで、左之助が弥彦に声を掛けた。

「良し、弥彦、今度は俺の二重の極みで勝負だ」

「おお、望むところよ!」

 弥彦が左之助の挑戦に同意したところ・・・、

 突然、八王子の高尾山方面から嵐を呼ぶ雷雲がやって来た。

「ゴロゴロゴロ・・・」

 その雷雲により、この多摩川の河川敷も瞬く間に雷雨となったのである。

 薫が3人に対して言った。

「大変!大雨よ、今日のところはこれにてお開きね」

 しかし、その4人を襲ったのは雷雨だけではなかった・・・。

「ゴオ―――――――――――」

 何と、この4人に凄まじい雷を伴った竜巻が向かってきたのである。

 剣心が木刀を持ってその竜巻に立ち向かった。

「危ない!3人共、直ぐに退避を!」

 しかし、その凄まじい竜巻はここにいた4人を巻き込み、その身を天空に上げた。そして、その竜巻は何条もの稲妻と天空には漆黒の穴が大きく開いていた・・・。


 「うん・・・、ここは・・・」

 剣心は手に持つ木刀を杖のようにして立ち上がった。そこには、自分が今まで見たこともない景色が広がっていた。

 剣心はうつ伏せになっている薫、弥彦、左之助に声を掛けた。

「薫殿、弥彦、左之助、無事でござるか?」

「ええ、何ともないわ」

「俺は大丈夫だぜ」

 立ち上がった左之助が顔を左右にし、この辺りを見回して言った。

「それにしても、ここは何処なんだ?」

 剣心が答えた。

「どうやら、拙者たちが知らない世界に迷い込んだみたいでござるな」

 この時、剣心たちはある男の声とも女の声でもない奇怪な悲鳴を聞いたのであった。

「プルプルプル――――――!」

 この声を聴いた剣心は木刀を持ってその悲鳴の声がする方へと向かった。

 しかし、その剣心たちの前にその悲鳴が聞こえる森の前に大きな河が立ちはだかっていた。

「拙者はすぐに行く。薫殿たちは焦らず後を追ってきて欲しいでござるよ」

「わかったわ」

 薫はそのように剣心に合図すると、剣心は凄まじい跳躍力を生かし、川幅50メートルはあろうかとするその河を中央の川石に右足を着かせると、そのままその跳躍力で向かい側の森へと向かった。


「プルプルプル・・・」

 その小さな金属でできた玉ねぎ型の生き物は高い崖の行き止まりに来てしまい、袋小路に突き合たってしまった。

 2人の男たちはそれぞれ剣と斧を持ってその金属でできた生き物に近づいていた。

 剣を持つ男が斧を持つ男に声を掛けた。

「このメタルスライムを捕まえて街のモンスター格闘場で売れば、数千ゴールドか、1万ゴールドになるぜ・・・」

「ああ、生け捕りには最適の場所だ」

 その剣を持つ男は剣を鞘に納めると、鉄の糸で縫った網をそのメタルスライムに向けて投げた。メタルスライムの身は絶体絶命だ。

「それ!生け捕れ!」

 斧を持つ男がそう叫ぶと・・・、そこに緋色の長い髪の男が2人に声を掛けた。

「そこの2人、待つでござるよ」

 その声を聴いた斧を持つ男が剣心に叫んだ。

「何だ?てめえは?俺たちは人間に害をなす怪物を捕獲しようとしているんだ!邪魔すんな!」

 しかし、剣心はその2人に毅然とやり返す。

「拙者にはその小さな生き物が人間に害をなすとは到底思えないでござるよ」

 その話を聞いた斧を持つ男が剣を持つ男に話しかけた。

「オイ、面倒だ、まずこいつから片付けようぜ」

 剣と斧をそれぞれ持つ2人はそれぞれの得物を構えて剣心に向かって行った。


 しかし・・・、

 剣心は天高く飛び上がると、こう叫んだ。

「飛天御剣流、龍槌閃!」

 斧を持つ男は剣蔵の頭上からの木刀を振り下ろし、その男の頭に一撃を加えた。

「ク.クソ――――――!」

 剣心は男が持つその剣が右斜めから斬りかかられると、素早くそれをかわし、右足を軸に体を180度回転させて、その剣を持つ男の背中に一撃を加えた。これは飛天御剣流、龍巻閃という技である。


「剣心!」

 薫が剣心を呼んだ。

 剣心は薫の声を聴くと同時にその小さなメタルスライムが被った鉄の網を取り払った。

「プルプルプル――――――」

 そのメタルスライムは嬉しそうに剣心に寄って来た。


 暫くすると、そのメタルスライムより大きなメタルスライムと、そして何か金属を溶かしたような容姿のスライムが出て来た。

「どうも我が子を助けて頂きありがとうございます」

 大きなメタルスライムが剣心にお礼を言った。

「何だあ?金属が喋ったぞ」

 左之助がそのスライムたちに驚きを隠せなかった。

「どうやら、この世界は人間とは別の生き物でも、言葉を話すようでござるな・・・」

 続いて、その金属を溶かしたようなスライムが剣心に説明した。

「この子はまだ小さいので、言葉を話すことは出来ません」

 弥彦がその2匹のメタルスライムに話しかけた。

「ここは一体どういう世界なんだ?」

 大きいメタルスライムが弥彦に答えた。

「ここは、ノワールブレイユという大地です。ここでは人間と龍と魔物とが共存しているよ」

 金属を溶かしたようなメタルスライムがこの世界の説明を追加した。

「それと、この世界では、魔界と契約して修行をすれば、誰でも呪文が使えます。尤も、個人個人のセンスはありますが・・・」

 左之助が両手の拳を合わせてそのメタルスライムたちに言った。

「そんなことより、早く俺たちは元の世界に帰りてぇんだ」

 しかし、大きいメタルスライムは体を左右に振って左之助に答えた。

「いいえ、私たちの力では皆さんを元の世界に戻すことはできません。取り敢えず、私たちの長老に会って下さい」

 左之助が不思議に思って言った。

「誰だよ?その長老って?」

「私たちメタルスライム族を束ねる長老です、この近くにメタルスライムだけが住む村に長老がいます」

 剣心は頷いて他の仲間たちに話しかけた。

「そうでござるか、ではその長老とやらに会うしかなさそうであるな・・・」

 

 剣心たちはそのメタルスライムの親子の導きによって、その「村」に着いた。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 その村の様子に左之助が驚いて、他の仲間3人に言った。

「こりゃ驚いたぜ、この玉ねぎみたいな怪物たちだけで村を運営しているとわな・・・」

 その村には宿屋、武器屋、道具屋、井戸、牧場、畑など、村人(村メタルスライム)の生活に必要な商業施設、厚生施設、生活環境が整っていた。

 

 そして、剣心たちはそのメタルスライム親子の導きによって、長老の住む家というよりは屋敷と呼ぶにふさわしい建物に案内された。

 メタルスライムの住む村の長老が剣心たちに挨拶した。見た目はメタルスライムの胴体に海月くらげのような足が何本もあり、また目と口の間にひげを生やしていた。

「どうも初めまして、わしがこのスティクス村を統括するメタリンという村長です」

 剣心が手に持つ木刀を右横において、きちんと背を伸ばし、茣蓙に正座をして頭を下げてメタリンに挨拶した。

「初めまして、拙者が緋村剣心でござる」

「剣心の妻の薫です」

「剣心の仲間の相良左之助だ、よろしくな」

「神谷活心流の道場の一番弟子、明神弥彦だぜ」

 それを聞いたメタリンは嬉しそうに4人に答えた。

「おおこれは、どうやら、そなた方の名前を聞けば、ここの世界の住人ではないことがわかります、どうして、このノワールブレイユの世界へ?」

 剣心が首を振ってメタリンに答えた。

「それはこっちが訊きたいぐらいでござるよ」

 薫がメタリンに説明をした。

「私たちは日本という国で明治の時代を生きている者たちです、早く元の世界に帰りたいのです」

 それを聞いたメタリンは不思議そうに剣心たちに返答した。

「二ホン?メイジ?何のことですかな?」

 左之助が腕組みをしながら「剣心組」の残りのメンバーの方を向いて言った。

「ダメだこりゃ、俺たちは次元を超えた世界へ跳躍したみたいだぜ」

「左之助・・・」

 剣心がそう言ってから暫く沈思した後、メタリンに尋ねた。

「何とか、拙者たちを元の世界に戻してくれる方をご存知ないでござるか?」

「うむ・・・」

 メタリンはその剣心の嘆願を聞こうとした。

「わかりました、それでは、わしが所有するマジカル・カーペットで大魔王バーン様がいる鬼岩城へ行こうではありませんか?」

 そのメタリンの話を聞いた薫が不思議そうに尋ねた。

「マジカル・カーペット?大魔王バーン?一体何の話?」

 その薫の問いにメタリンは素直に答えた。

「ホッホッホッ、お嬢さん、マジカル・カーペットはここから3000タイユもある鬼岩城まで約3時間半で行ける便利な道具じゃ、そして、そこに、我々魔族・龍族・亜人間族の全てを統べる大魔王バーン様がおられる、そのバーン様の魔力をもってすれば・・・」

「大魔王バーン・・・」

 剣心はその名前を聞くと何か禍々しいものを感じた。

 左之助が両手の拳を突き当てて言った。

「それじゃ、早速その大魔王バーンさんとやらに会わせてもうらおうじゃねぇか」

 しかし、ここで、メタリンは首を振った。

「いやいや、もう時は日の沈む夕刻となりつつある。今日のところはこの村に泊まり、明日の朝に出発することでいいではありませんか?異次元から来た旅の方々?」「・・・わかったでござるよ」

 剣心たちはメタリンにそう勧められて、メタリンの屋敷に一泊することになった。


 その夜、一部屋を与えられた剣心と薫であったが・・・、まず薫の方から剣心に声を掛けた。

「ねぇ、剣心・・・」

「わかっているでござる、薫殿、華凛のことでござるな?」

「ええ、華凛はまだ4歳だし、このまま私たちが元の世界に帰れなかったら、どうしようかと・・・」

「とにかく、明日の大魔王バーン殿とやらに会うしかなさそうでござるな、それにしても・・・」

「それにしても、何?剣心?」

「このベッドという寝床とパジャマという寝間着はなんだか眠りづらいでござるよ・・・」

「でも、日本人である私たちがベッドで寝れるなんて、何となく王侯貴族のハネムーンみたいじゃない」


 そして、同じ寝床となった左之助と弥彦も寝る前に会話をしていた。

「左之助、昼に聞いた話だと、この世界では魔界と契約した者は魔法が使えるとか言っていたよな」

「ああ、それがどうしたってんだ?」

「俺は剣心並みの剣客にはなれないかもしないが、その代わり呪文が使えれば、己の強さを補えると思ってな・・・」

「勝手にしろよ、俺は体躯から出せるこの拳と足技が使えればそれでいい」

 このノワールブレイユの夜は更けていった。


 それから、翌日の朝、杖を持ったメタリンが剣心たち4人に説明した。

「おはよう、皆の者、この杖はマリーツァの杖と言って杖の中身に色々な物を収納できるのじゃよ、ほれっ」

 なんと、メタリンはその杖の上部の蓋を開かせて、マジカル・カーペットを出したのであった。

「これで、大魔王バーン様のいる鬼岩城まで行ける。皆の者、それでは乗ってくれ」

 ここで、1匹のメタルスライムが走り寄ってきた。

「待ってください!長老!」

「おやおやメタ吉か、一体何の用だね?」

「私は剣心さんに子供を助けてもらいました。私もこの件でご恩返しがしたいのです」

「・・・わかった、では一緒に乗るが良い」

 メタリンはそう言うと、自らを先頭に剣心たち4人と、メタ吉をマジカル・カーペットに乗せて、スティクス村から北西の方向にある鬼岩城まで飛ばしたのであった。


 一行が着いた鬼岩城はその周辺を岩山で囲まれ、辺りには草花の数も乏しかった。

 メタリンが剣心たちに説明した。

「ここが、大魔王バーン様がおられる鬼岩城じゃ、並みのモンスターではバーン様に謁見することすら叶わん」

 そう言って、メタリンは鬼岩城の門番である4匹のガーゴイルたちにマリーツァの杖から身分証明書を見せ、鬼岩城の城内に剣心たちを導いた。


 薫が剣心にこの鬼岩城の城内を見ながら話しかけた。

「何か、物々しい感じの城ね、剣心」

 城内の回廊を歩いていると、魔軍司令ハドラーにメタリンがであった。

「おおこれは、魔軍司令閣下、ご機嫌うるわしうございます」

「うむ、メタリンか?おや?ところで、お前の連れて来た人間たちは何者だ?」

「この者たちは、異世界から我らが世界、ノワールブレイユに迷い込んだ者たちであります」

「フン、お前がその者たちの手助けをしようとするのか?お前も酔狂なことだな」

「このような者たちでも、大魔王バーン様の役に立つかと思いまして・・・」

「まぁ、好きにするがいいさ、俺はこれから六大師団の団長たちと軍議があるからな」

「はっ、これにて失礼させて頂きます」

 この後、メタリンは剣心たちに説明した。

「今から、我々、魔族や龍族、亜人間族全てを統べる大魔王バーン様との謁見となる、くれぐれも粗相のないようにな・・・」


「良くぞ来た。異世界からこのノワールブレイユに舞い降りた者たちよ」

 大魔王バーンが剣心たちに御簾の中から声を掛けた。そのバーンの威圧と威厳は今の剣心たちを圧倒した。

 早速、剣心は自分たちの置かれた立場をバーンに説明した。

「我々は日本国、明治の時代に生きるものたちでござる。理由はわかりませぬが、この世界に迷い込みました。大魔王バーン殿、何卒、貴殿のお力で我らを元の世界に戻してはもらえぬではござらぬか?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 バーンは暫く黙った後、剣心たちにこう話しかけた。

「そうか・・・、そうするとお前たちは「時空嵐じくうらん」に巻き込まれたのかもしれんな・・・」

「時空嵐・・・」

 剣心は不思議そうにその言葉を口に出した。

 バーンはその話の続きをした。

「このノワールブレイユの世界にも時折、その時空嵐によってやって来るものたちがいる、尤も、それはお前たちのように人間とは限らんがな・・・」

 それを聞いた剣心はバーンに更に嘆願した。

「そうであれば、その逆もまた可能な筈、早くバーン殿のお力で何とか出来ぬでござるか?」

 しかし、バーンはその剣心の嘆願を振り切るように「あること」を要求した。

「お前たちの願いはわかった。しかし、実は余がこのノワールブレイユの世界を理想郷に変えようとするのを邪魔する者たちがいるのだ。その者たちを倒せば、お前たちの願い、聞き入れてやっても良い」

「理想郷・・・」

 剣心はその言葉に敏感に反応した。そして、素早くバーンに訊き返した。

「バーン殿の言う理想郷とは一体どの様なものでござるか?」

「フフフ、良くぞ聞いてくれた、余の理想とする世界は魔族も、龍も、亜人間も、そして、人間もそれぞれが共存・共生していく世界が理想である。しかしな、この世界の人間は強欲で傲慢で猜疑心が強い、このノワールブレイユは自分たちのものだと錯覚しているのだ・・・」

 ここで、メタリンが剣心たちに話かけた。

「その傲慢な人間の代表格が勇者を名乗るダイとその仲間たちであるのだ。であるからして、そなたたちがもしも、そのダイたちを打倒することができれば、大魔王バーン様はそなたたちを元の世界に返してやっても良いと、おっしゃっておられるのだ」

 剣心は改めてバーンに問い返した。

「大魔王バーン殿、その理想郷の話、天地神明に誓って嘘ではござらんな?」

「うむ、余がお前たちに嘘をつく理由は露ほどにもない」

 ここで、左之助が剣心とバーンの会話に容喙した。

「ちょっと待ってくれよぉ、大魔王バーンさんとやら、この緋村剣心はなぁ、幕末という動乱の時代に散々人を斬ったことを悔いて、不殺ころさずのるろうにとなったんだ。その剣心に理由はどうあれ人殺しをさせようってのかい?そいつは我慢ならねぇ」

 左之助は両手の拳を固めた。

「さっきから聞いていりゃあいい気になりやがって、そりゃ、あんたがこの世界をどうのこうのすることは俺たちには関係ねぇ、だが、その御簾に隠れて正体を現さず、俺たちに上から目線で命令する気かよ、もう我慢ならねぇ、その化けの皮を剥いでやる!」

「待て!左之助!」

 剣心のその制止も聞かず、左之助はバーンに殴りかかった。

「食らえ!二重の極み!」

 しかし・・・、

「愚か者め!」

「ビカッ!」

 御簾がはぐれる前にバーンから放たれた魔気によって、左之助の右の拳は跳ね返され、彼はもんどりを打って謁見の間の床に倒れた。

 この様子を見たメタリンが左之助に激怒した。

「この馬鹿者め!大魔王様になんという不敬な真似を!バーン様、何卒、この者の愚行をお許し下さい」

「左之助!」

 剣心は右の拳で左之助の頭を殴った。

「大魔王バーン殿、それにメタリン殿、拙者の仲間の非行を何卒お許し下され」

 バーンは剣心の謝罪によって左之助の行動を許そうとした。

「緋村剣心とやら、随分と血気盛んな若者を友に持ったものだな、その者が二度と余に不敬な真似をしないというのであれば、この件は無かったことにする」

「チッ、畜生」

 左之助の右の拳にはバーンの魔気に触れて火傷のような傷を負った。

 ここで、剣心は右手に木刀を持ってバーンに訊いた。

「拙者は幕末の動乱以降人を殺す、いや人を斬ることも禁忌としてきたでござる。そんな拙者にこの木刀より優れた武器を持てというのでござるか?」

「その点においては心配ご無用じゃよ」

 弥彦が不思議そうにメタリンを見た。

「なんだよ?この剣心にふさわしい武器があるのかよ?」

「簡単な話じゃよ、このわしが剣心、そなたの持つ刀の刀身となるのじゃよ」

「エエッ?!」

 剣心とその仲間たちは驚愕の声を上げた。

 メタリンが話を続けた。

「このジーン様の配下にはカスト・ベルクという魔界の刀工がいる。この後、この城の鍛冶場に行けば、ベルクがいる」

 ここで、薫が心配の声を上げた。

「でも、剣心は不殺ころさずを誓った身、どんな刀剣だって・・・」

 メタリンはここでこの世界の説明をした。

「フォフォフォ、わしらメタルスライム族で作られた刀剣はな、持つ者の闘気によって、刃の切れ味が変わってくる。何とかと鋏は使いようじゃ」

 ここで、メタ吉が喜びながら言った。

「私も、皆さんの役に立ちたくてここへやって来ました。私が刀身となれば、長老程ではないですが、良い刀剣が作れると思います」

「わかったでござる。では、この城の鍛冶場へと急ぎましょうぞ」

 ここで、剣心はバーンやメタリンに同意して、この鬼岩城の地下にある鍛冶場へ仲間やメタリン、メタ吉と共に向かって行った。


「何?刀を二振り程製作して欲しいというのか?お前らは?」

 魔界の名うての刀工であるカスト・ベルクは剣心たちにぶっきらぼうにそう話しかけた

そこで、メタリンはベルクに答えた。

「そうです、このわしとメタ吉の体を溶鉱炉に入れて、玉鋼を作って、それで、刀身を作って下され、お願いしますのじゃ」

 ここで、左之助が心配そうにメタルスライム族たちに訊いた。

「おいおい、そんなことをして、お前らの体は大丈夫なのか?」

 それに対して、メタ吉が左之助に答えた。

「心配いりませんよ、私たちのメタルスライム族はその身を武器に変えると、装備したものとしかコミュニケーションが取れなくなりますが、あなた方が私たちの武器を必要としなくなれば、またその身を溶鉱炉に入れて元の体に戻りますから」

「へぇ、そうかい、そりゃ便利な体を持っているんだな」

 しかし、ここで左之助は刀工であるベルクの右手をいきなり触ってこう言った。

「おい、ベルクさんよぉ、この手の竹刀ダコは刀鍛冶の時にできたものじゃねぇよなぁ、あんたも剣を握る剣客ってことかい?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 暫く沈黙していたベルクであったが、左之助に自分の正体を教えた。

「やれやれ、蛇の道は蛇だな、お前は相良左之助とか言ったな、いかにも、俺はかつて魔界の冥龍王、ヴェルザーとその配下とも戦ったことがあるんだぜ」

 そのベルクの台詞に剣心が反応した

「その冥龍王ヴェルザーとは何者でござるか?」

「このノワールブレイユの地下の世界に魔界と呼ばれる世界が広がっている。奴らはその闇に閉ざされた世界から太陽が溢れるこの世界を虎視眈々と狙っているのさ」

「成る程、それ故、バーン殿はこの世界をその冥龍王ヴェルザーから守っている存在とも言えるのでござるな」

「ああ、大魔王様とて、全ての価値観や行動が正しい訳ではないが、冥龍王ヴェルザーよりはまともな支配者だと思うよ・・・」

 ここで、ベルクは剣心たちに一つのアドバイスをした。

「お前たち、この俺が刀剣を二振り作るまで、大体一週間ぐらいかかる。それまで、剣術の修行か、呪文の契約を済ませておくんだな」

 それと、ここで、メタリンが弥彦にあることを依頼した。

「ところで、坊主、このわしが刀身になると、マリーツァの杖の使い手がいなくなる、この杖の所有権は一時、お主に譲りたい、宜しいかな?」

「おお。別に構わないぜ」

「この杖は逆に持つと敵と戦える武具ともなる、但し、余りに固い物に衝突させんでくれよ、杖が壊れるからな・・・」

「おお、まかしとけ、金属海月くらげの爺さん」

「わかったでござる、ところで・・・」

 剣心はベルクにそう勧められると、剣心は刀の拵えを薩摩拵えにして欲しいと、そして、薫は拵えを白鞘にして欲しいとベルクに依頼した。


 その後、剣蔵たちは魔王軍の六大師団の一つ、妖魔士団に指導で魔術師が描いた魔法陣の中で呪文の契約を行い、剣心はデイン系の呪文を、薫は火炎系や補助呪文を、弥彦は同じく補助呪文や回復呪文やそれぞれ魔界と契約した


 そして、それから1週間後、ベルクが遂に刀剣二振りを完成させた。

「そら、刀剣二振り一丁上がりだ」

 剣心はそのメタリンが刀身となった刀を手にした。

 すると、刀身、いやメタリンが剣心に声を掛けてきた。

「フォフォフォ、お主、迷っておるな、かつて人斬りとして名を馳せた己のことを、だが、心配は無用、嘘だと思うなら、何かの物で試し斬りをしてみることじゃな」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 剣心は暫く沈黙していたが、やがて、ベルクが鍛冶場の台に太い五寸釘を金槌で二本打ち付けた。

「それ、剣心とやら、ではこの釘二本を斬ってみろ、無論、斬りたい方に己の闘気を入れてな」

「わかったでござる」

「ハッ!」

 剣心は刀の穂先、ふくらと呼ばれる部分に自らの闘気を集中させて、居合切りをした。

 そうすると、二本の釘のうち、手前は釘の形が折れただけだったが、先の方にある釘は見事に真っ二つになったのであった。

「・・・・・・・・・・・・・・」

 その刀を鞘に納めた剣心はベルクに礼を言った。

「ベルク殿、拙者の心意気に合わせた刀を作って頂き、誠に感謝するでござる」

「やったな、剣心」

「これで一応、敵と戦えるお膳立てはできたって訳だな」

 弥彦と左之助はそれぞれ今の剣心に似合った刀ができたことをそれぞれ喜んだが、剣心の妻である薫だけは、

「剣心・・・」

 と、心配そうに見つめるだけであった。

 そして、剣心は心の中で、

「巴、俺はひょっとして不殺ころさずの誓い、破るかもしれぬ、どうかその時は・・・」

 と、呟いた。


 実は、緋村剣心は幕末の動乱時、厳冬の中、幕府方の隠密と戦っている最中、誤って、当時、剣心の妻であった巴を「誤殺」してしまい、それが今の剣心に「不殺ころさず」の誓いを立たせる原因となったのである。


 だが、そんな剣心の思惑とは別に、魔王軍は剣心たちに勇者ダイたちを倒す為の「軍議」に参加せよ、との御達しを出してきたのである。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 緋村剣心:職業:剣客

 性別:男

 LV:20

 力:68 素早さ:153 賢さ:88 身の守り:56 幸運:75 HP:147 MP:50


 相良左之助:職業:元喧嘩屋

 性別:男

 LV:18

 力:102 素早さ:128 賢さ:35 身の守り:97 幸運:64 HP:216 MP:0


 緋村薫:職業:道場師範代

 性別:女

 LV:17

 力:45 素早さ:96 賢さ:79 身の守り:50 幸運:82 HP:124 MP:77


 明神弥彦:職業:神谷活心流一番弟子

 性別:男

 LV:12

 力:53 素早さ:81 賢さ:75 身の守り:63 幸運:55 HP:137 MP:83

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る